らいおんの小ネタ劇場

2004 年 5 月 20 日


第 38 回 : 集団睡眠

 その日、所用で外に出ていた私が家に帰ってくると――

「くー」
「すぴぃ〜」
「むにゃ……」
「すぅ……」

 ――またもよイリヤスフィールがシロウを枕に、昼寝を貪っていました。
 というか、今回はイリヤスフィールだけでなく、大河に凛に桜もです。

「まったく、懲りるということを知らないのでしょうか、彼女は……」

 前回、額に肉の字を刻まれたそのことは、既にイリヤスフィールの中では遠い過去の出来事となっているのでしょうか。
 他の三人も、その悲劇は十分すぎるほどに目の当たりにしているはずなのに、いい度胸であると言わざるを得ない。

「ここは一つ、あのときの悪夢を思い出してもらわねば――」

 そう思い、自室にあのとき使用した水性マジックを取りに向かおうと足を向けたところで、ふとシロウにしがみつく彼女たちの寝顔が目に入ってくる。

「……」

 なんとも――心地よさそうな。
 イリヤスフィールはシロウの右腕を枕にし、凛は左のももで桜は右のもも。そして大河はというと、左肩に頭を乗せて大の字になっていた。

 ふむ……あと、残っている箇所といえば……


「うーん……なんだろう、寝てたら妙に全身が痛いんだけど、なんなんだ?」
「さあ、なんででしょうねぇ」
「わたし、わかんなーい」
「寝てる間に暴れでもしたんじゃないの?」
「くすっ、先輩ってば意外と寝相が悪いんですね」
「む? なに言ってるのかにゃ? 皆して士郎をまく――」

 ですから大河、私たちは何もわからないのだと言っているではないですか。
 わかっているのはシロウのお腹は意外と筋肉質で温かいということだけで十分なのです。