らいおんの小ネタ劇場
2004 年 5 月 10 日
第 31 回 : 鍛錬
鋭く竹刀と竹刀を打ち合わせる音が幾つも道場に響き渡り、その音と同時にシロウの裂帛の気合が空気を震わせる。
ずんと響く踏み込みの音、その後にやってくる力強さを増した剣線。
シロウは本当に強くなりました。元々素養も高く、努力の人でもある彼であれば人よりも短い時間で高みに昇って往くのはわかっていたことですが、それを差し引いても彼の成長振りはめざましい。
彼の剣の師として、私はそれが素直に嬉しかった。
だが、今も私の切り返しを受けて激しく息をつく彼に、私は内心を抑えて厳しい言葉をかける。
「ちっくしょ、これだけやってかすりもしないなんてさ」
「……シロウ。あなたは確かに素晴らしい素養を持っていますが、何度も言っている通りあくまでそれは人の身として見ての事です。その程度ではサーヴァントであるこの身には一切通用しません」
「わかってるけどさ」
唇を尖らせて不貞腐れたような顔をする彼がおかしくて、わからぬようにこっそりと笑みを漏らす。
これでも私は彼のサーヴァントだ。マスターの考えていることなど手に取るようにわかる。
シロウにとっては、サーヴァントである私ですら庇護の対象なのだ。その私に力で全く及ばないのが悔しくて、自分を不甲斐なく思っているのだろう。
まったく……なんて愚かなマスターだろうか。ただの人が英霊であるサーヴァントに勝るなど有り得ないというのに。
だが同時に、シロウのそんな気持ちが嬉しい。彼にとって守るべきである大切な者の中に私も入っている――その一点が。
「それではシロウ。次を最後にしましょう」
「ああ、そうだな。そろそろお昼の時間だし」
ええ、そういうことです。
「では、いつでもどうぞ」
その声を皮切りに、私は竹刀をやや上段に近い正眼に構えてシロウの動きを待つ。
対するシロウは左半身になって竹刀を肩口に構える。アサシンが言うところの八相という構えだ。
そして、
「オオッ!」
短く気合を発し、一息の勢いで迫ってきた。
ならば私も最後くらいはそれに応えるとしましょう。
シロウの踏み込みにあわせてこちらか踏み込み、無言の気合を発して竹刀を振り下ろす。
それは間違いなくシロウの頭部に命中し、彼を打ち倒す――。
「ッ!」
――はずだった。
しかし、シロウはそれを寸前で見切り、髪の先を掠った手応えだけ残して私の竹刀は空を切る。
――ばかな。
その一瞬、私が呆とした隙に、シロウは竹刀を大きく振りかぶって今にも打ち下ろそうとしていた。
「クッ!」
私は咄嗟に身を捻り、降ってくる剣先を避けて――
「……」
「……」
――その。
「あー、セイバー」
「は、はい」
「……その、どいてくれると助かるんだけどな」
「は、はい」
――シロウと、絡まってしまいました。
「あのー、セイバーさん。聞いてますかー?」
「は、はい」
「だからだな……このままじゃまずいと思うんだが」
「は、はい」
「……」
「は、はい……」