らいおんの小ネタ劇場

2004 年 4 月 29 日


第 21 回 : 大型連休 温泉旅行・旅立ち編

 そして翌日――

「何故、この面子なのでしょう、シロウ?」
「いや……俺もよくわからんけど、きっと藤ねえだ」

 温泉旅行に同行するメンバーは、集めてみればいつもの面子勢揃いだった。
 恐らくシロウの言う通り、昨夜のうちに大河がそれぞれに連絡したのでしょう。

「悪いな、坊主。俺たちまで誘ってもらっちまって」
「いや、俺は誘った覚えはないんだけど」

 ええ、もちろん私も誘った覚えはありません。
 言峰神父とかギルガメッシュなんかは特に。

「ごめんなさいね、坊や。わたしたちもご一緒させてもらうわね」
「まあ、そりゃ構いませんけど……その坊やってのはやめてくださいよ、メディアさん」
「あら、ごめんなさい。それじゃ士郎君でいいかしら?」

 この夫婦はこの夫婦で、今回の旅行を新婚旅行代わりにするつもりのようだ。


 せっかくの旅行なのですし……その、シロウと二人の時間も少しは……取れるのではないかと期待していたのですが……
 この様子ではきっとそれも叶わない願いなのでしょう。

 少しだけ……ほんの少しだけそのことを残念に思う。
 だけれども、それはそれとして楽しみなことには変わりない。この時代に喚び出されて初めてこの街から外に出る。
 それがこんなにも楽しみに感じられる。

 今まで狭かった私の世界が、この時代で広くなるということが、こんなにも楽しい。


 その後、アーチャー、ライダー、宗一郎がそれぞれ運転する車に分乗して一路温泉へと出発。
 車窓の外に流れる景色がだんだん知らないものに変わっていき、それだけで心が浮き立つ。

 大河曰く、

「こうして旅の目的地へと向かう道中もまた楽しいというものよ、セイバーちゃん。ねえライダーさん、お酒飲んでもいい?」
「タイガは暴れるので禁止です」
「ああ、それなら大丈夫だよライダー。藤ねえの酒ならアーチャーの車に積んどいたから」
「な、なんだってーーー!?」

 とのことです。
 確かに大河の言う通り、道中もまた楽しいものだとは思いますが、大河からお酒を取り上げたシロウの選択は間違いではないでしょう。

 なにせ、お酒が入っていなくても大河はこうして暴れ、今もシロウの首が絞まっているのですから――