らいおんの小ネタ劇場

2004 年 4 月 28 日


第 20 回 : 大型連休 温泉旅行・発動編

 黄金週間。
 毎日、シロウのような学生や大河のような大人が忙しく過ごすこの日本という国で、年に一度やってくる一週間をこのように称するそうです。
 簡単に説明すると、一週間の間、毎日が日曜日のようなものだと――凛は言っていました。

 さて、事の発端は、その黄金週間を翌日に控えた夕食の席にて。
 やはりというかなんと言うか、あまりにも唐突な大河のひと言からでした。

「士郎! お姉ちゃん、温泉に行きたい!」
「「「「「は?」」」」」

 食卓を囲んでいた私とシロウ、それから凛、桜、イリヤスフィールの声が見事に重なった。
 ちなみにイリヤスフィールといつも一緒にいるバーサーカーは、居間に入らないので庭で食事をしている。申し訳ないのだが、こればかりは仕方ないのだ。

「明日からせっかくのゴールデンウィークじゃない。ここはひとつ、日頃士郎をご愛顧しているおねえちゃんへの感謝の気持ちを込めて温泉に連れて行くべきなのだと思うのだが、そこんところどうなのよぅ」
「いや待て藤ねえ。なんかいつもの如く話がぶっ飛んでて、何がなんだかついていけない。温泉がどうしたって?」
「つまり! お姉ちゃんは露天風呂に浸かってお酒をきゅってやりたいのだ!」
「……あー、つまりなんだかまだ良くわからんが、とりあえず安易に頷くのは危険だってことは良くわかった。特に酒」

 シロウの言葉に私は深く頷く。
 大河の酒癖は非常に悪い。どのように悪いのかというと、暴れるのだ。手がつけられないくらいに。
 そして大概の場合、被害を受けるのはシロウなのである。

 だがしかし、それはそれとしても、

「でも、温泉っていうのはいいわね。せっかくの休みなんだし、どこか旅行っていうのもいいじゃない」
「そうですね。せっかくいろいろなごたごたも片付いて落ち着いたことですし……先輩、いいんじゃないですか?」

 凛と桜の意見には素直に賛成できる。
 私も温泉というものには以前から興味があったところです。テレビで見る限りでは、あの非常に大きいお風呂はとても気持ちがよさそうでした。

「だけどなぁ……いまからじゃ多分どこの宿もいっぱいだぞ? なんせゴールデンウィークの前日だし」

 対して腕を組んで考え込むシロウは難しい表情をしている。

「えぇ〜、そんなのつまんない。ねえ、シロウ、どうにかならないの?」
「と言われてもなぁ……俺としてもイリヤとセイバーには是非、温泉を体験してもらいたいんだが……」
「ダイジョーブッ! こんなこともあろうかと、お姉ちゃんはぬかり無しよッ!」
「大河? 何か言い方法でもあるのですか?」

 私の問いに大河はこっくりと大きく頷き、

「うちのお爺様の知り合いで温泉旅館を経営している人がいてね、事情を話したら人数分、部屋をとっておいてくれるって」
「ホントか、藤ねえ?」
「もちろん! お姉ちゃんを信じなさいっ」
「すごーいタイガ! たまにはやるじゃない」
「むふふふー、もっとほめるのだ、ちびっこー」


 というわけで、明日からの黄金週間は、雷画のお知り合いが経営する温泉旅館に行くことが決定しました。
 考えてみればシロウと泊りがけに遠出するのは初めてのことです。
 温泉もまた楽しみではありますが、シロウとの旅もまたとても楽しみで、私はその日、なかなか寝付くことができませんでした。