らいおんの小ネタ劇場

2004 年 4 月 26 日


第 18 回 : お土産

 アルバイト先の店長に残り物のケーキを頂いた。
 残り物とは言っても、日を置くと売り物にならなくなるというだけで、まだまだ美味しく食べられる。
 というわけでシロウと一緒に頂こうと思い、持ち帰ったのですが――。

「おかりなさいセイバーさん。ケーキ焼いたんだけど、食べる?」
「あ……頂きます、桜。ありがとう」

 咄嗟に背中にケーキの箱を隠す。

 帰ってみるとちょうどお茶の時間の真っ最中で、桜の手作りのケーキに皆が舌鼓を打っていた。
 ……まあ、桜手作りのケーキと残り物のケーキでは比べるまでもないわけです。

「部屋に行って荷物を置いてきますので、私の分も用意しておいていただけると嬉しい」

 そう言い残して足早に部屋に向かう。
 少し残念なことではあったが、桜のケーキは美味しいので、それはそれで楽しみだ。

「セイバー」
「え? シロウ?」

 呼び止められて振り向くと、シロウが少しだけ苦笑いを浮かべて立っていた。

「なんですか、シロウ」
「えーと、さ。そのケーキ、俺の分もあるか?」
「……え?」

 ……どうしてそのことを。

「あとで一緒に食べよう……わざわざ貰ってきてくれたんだろ? お茶、淹れるからさ」
「……はい。喜んで」

 どうしてシロウにばれてしまったのかはわからないけれど、どうでもいいことだろう。元々、このケーキはシロウと一緒に食べたくて貰ってきたのだから。
 と、なれば、やはりシロウ以外の誰かにこのケーキの存在を知られるわけにはいかない。

「ではシロウ。また、後で」

 私は足取りも軽く、部屋にシロウと食べるケーキを隠しに行った。