らいおんの小ネタ劇場

2004 年 4 月 20 日


第 12 回 : 寝違えた

 朝――目を覚ますと、目の前にシロウの顔があった。
 息がかかるくらい近くに、というか実際にかかってくすぐったいのですが。

 どうやら私とシロウは、今同じふとんで同衾しているようです。
 ああ、どうりでこんなにもあたたかいわけです。シロウと私の身体が密着しているからですね。

 ……落ち着きましょう。

 落ち着いて何故このようなことになっているか思い出してみる。


 そう、確か昨日の夜は、一度床についてから夜中に起きたのでした。
 仕方のないことなのです。
 あれほどまでに空腹に苛まれては、眠りたくとも眠れないのが道理。

 居間に残っていたお茶菓子を少々頂いて、私はそのまま自分の部屋に戻って眠ったはずなのですが――。


「あれですね、要するに入る部屋を間違えたということです」

 シロウの部屋は私の部屋の隣です。
 空腹を満たし、今度は眠気に苛まれていたのでは間違えたとしても何の不思議はありません。
 これがシロウではなく、他の男性であったならば間違いなく気づいていたでしょうが、シロウならば気付かないのも無理はないでしょう。

 さて――そろそろ起きる時間なのですがどうしたものか。
 シロウは気持ちよさそうに眠っているが、このままではきっと寝坊してしまうでしょう。
 かといって無理に起すのも――。

「……少しくらい寝坊したところでかまわないでしょう」

 それでシロウのぬくもりに包まれてまどろむことが出来るなら、一度やニ度の寝坊などどうということはありません。
 朝食の仕度だって桜がいてくれるのだし。

 では、おやすみなさい、シロウ……。