らいおんの小ネタ劇場

2004 年 4 月 16 日


第 8 回 : 耳掃除

 春うららけし。
 いつぞやと同じ始まり方ですが、今回は立場が逆転しているのです。

「シロウ、そんなにごそごそと動かないでください」
「いや、だってさ、くすぐったいんだからしょうがないじゃないか」
「ですがそんなに動かれると、ちゃんと掃除が出来ない」

 縁側でシロウを膝枕し、のんびりとしていた私。
 ふと思い立って、いつか桜がしていたようにシロウの耳掃除などをしてみることにした。

 シロウの耳は意外と小さいのですが、その小さな耳の中は意外なほどに汚れていた。
 几帳面な性格をしているシロウにしては珍しいことですが、やりがいがあるのは確かです。

 ですがやはり、今日も春という季節に相応しく、ぬるい陽気はやたらと私の眠気を誘う。
 油断するとうとうとしてしまい、意識が落ちてしまいそうになる。
 頭を振りながらどうにかこうにかそれをやり過ごしていたのですが、そろそろそれも現界に近い。

「――、――、――」
「? セイバー?」
「――、――、――、――!」

 がくんと頭が落ちたその瞬間――
 ――妙に生々しい感触が手に伝わってきた。

 それは例えると、ちょうど耳に耳掻きを突き立てるような……。

「って、シロウ!? シローーーウ!!?」


 直後、家中に響き渡った悲鳴に驚いてやってきた桜にさんざん怒られた。
 桜の怒りようといえば、それはもう怒髪天を衝くというのがピッタリで、一時間以上お説教された挙句、晩ごはんまで抜きにされてしまった。

 今度からは気をつけようと思う。反省。  ですから、どうかごはん食べさせてください。