らいおんの小ネタ劇場
2004 年 4 月 14 日
第 6 回 : 膝枕
春うららけし。
この国にはこんな言葉があります。古い意味でのどかな春の日を意味するのだそうですが、ちょうど今日のような日のことを指しているのでしょう。
こうして縁側に座って、お茶を頂きながらのんびりとしていると……。
今日はこの後道場でシロウと稽古でもしようと思っていたのですが、このまま過ごすのも悪くないと思えてくる。
「はぁ……」
髪を撫でる柔らかい風が心地よく、思わず口から吐息が漏れる。
そのまま風に誘われるようにごろりと横になり、庭の風景をじっと眺める。
「のどかなものですね……」
そうしてしばらく横になっていると、不意に眠気に襲われてまぶたが落ちてきた。
このまま……眠ってしまおうか……。
「ん……」
「あ、起きたのかセイバー?」
「……シロウ?」
目覚めるとあたりはいつの間にかオレンジ色に染まっていて、風も少し冷たくなっていた。
そして私を見下ろしているシロウの優しい目。
……見下ろしている?
「し、シロウっ!?」
「おっ、と。いいじゃないか、たまにはさ」
慌ててシロウの膝から起き上がろうとしたところを、肩を押さえられて制される。
しかし、これは恥ずかしい。
などと――そう思いつつも、やっぱり動けない自分もいる。
「……しょ、しょうがないですね。今日だけですよ?」
「はいはい」
憎まれ口を叩く私に苦笑するシロウ。
なんとなくそれが悔しくて、今度仕返しをして差し上げようと思った。
結局私たちは、晩ごはんの仕度を終えた桜が呼びにくるまで、実に一時間近くもこのままでいた。
まあ……こういうのも、たまにはいいものですね。