らいおんの小ネタ劇場

2004 年 4 月 11 日


第 3 回 : 釣り

 今日はシロウたちも学校が休みなので、皆で釣りをしに行くことにした。
 冬木市を離れ、バスに乗って山林に。美しい清流に釣り糸を垂らす。

 耳には流れる川の音、頬に感じるのは清冽な山の息吹。
 自然に包まる中でこうしてのんびりと過ごすのも偶には良いものです。

 ……が。

「おい、セイバー。相変わらず釣果ゼロかい? はっ、セイバーのクラスも堕ちたもんだな」
「黙っていてくださいランサー。まだ勝負はこれからです」
「ランサー、そんなにセイバーを挑発するなよ。セイバーも、釣りするの初めてなんだろ? だったらしょうがないさ」
「シロウ、初めてだからといってそれが言い訳になるわけではありません。これは私の誇りの問題だ」
「ま、がんばんな。今日の晩メシは俺と坊主でせいぜい稼いでやるからよ」
「クッ……」

 悔しい。悔しいが、確かにランサーとシロウのバケツには釣り上げた魚が水を跳ね上げている。
 対して私のバケツの中は、汲み上げられた水と浮かんでいる木の葉が一枚。言い返せることなどありません。

 だいたいあのバーサーカーですら釣果を挙げているというのが納得できない。
 彼と私とでいったいなにが違うというのでしょうか。

 ……いや、こんなのはそれこそ言い訳にしか過ぎない。今はただ無心で釣り糸を垂らすのみ。
 川辺で水遊びをしているイリヤスフィールと大河を横目に、私はじっと釣り糸に集中する。

「……むっ!」

すると、きた。ついに私にもきた。
釣り糸にかかる確かな重みと、手首に感じる確かな手ごたえ。

「ここですっ!」

そして私は釣竿を一気に引き上げた。


「――シロウ、これは食べられるのでしょうか」
「いや……さすがに無理だろうな……ゴム長は」

 ランサー、そんなに笑わないでください。斬りますよ。