らいおんの小ネタ劇場
2004 年 4 月 10 日
第 1 回 : セイバーの日記帳
私は今日から日記をつけ始めることにしました。
聖杯戦争も何事もなく終り、結局私はこの時代に、シロウの傍に残ることにした。
いつか遠い未来、彼の傍を離れてカムランの戦場に戻ることになるかもしれない。だからその時に、せめて一つでも多くの思い出を残していきたいと、筆を取ることにしたのです。
この日記帳はシロウに買ってもらった。
新都にあるデパートというところで買ったのだが、装丁の獅子の絵が個人的に気に入っている。
シロウに礼を言ったら、
「いや、セイバーにはさんざん世話になったし、これからもなるんだからさ、これくらい当然だろ?」
と言ってくれた。やはりシロウは良い人だ。
翻ってやはり凛は失礼だと思う。
「ほら、セイバー。こっちのほうがそれよりいいと思うんだけど。セイバーっぽくて」
そう奨めてくれるのはありがたい。
だが、よりにもよって獅子がガゼルを襲っている装丁の日記帳を奨めてくるなどどうかしている。
しかも私らしいとはどういうことなのか。
「ん? だってさ、この構図って稽古してるときの士郎とセイバーそっくりじゃない」
……シロウ、そうなのでしょうか。
……何故、明後日の方向を向いて答えてくれないのでしょうか?
第 2 回 : 猫まっしぐら
それは私が朝食のあとの散歩をしていたときのことだ。
「にゃー」
「む……貴公は」
塀の上で短く鳴いた猫と目が合った。
彼には見覚えがある。見事なまでの目元の黒ぶち、短いしっぽ――。
そう、いつぞや私の朝食を掠め取って行った、かの野良猫殿に違いない。
「このようなところで出会うとは……いつぞやの仇はとらせていただきます」
――そして、私と彼の、誰にも知られない戦いがはじまった。
「……只今帰りました、シロウ」
「ああ、お帰りセイバー、おそかった……って、どうしたんだよその顔の引っかき傷! 服も泥だらけじゃないか」
「……聞かないでください……いえ、ただ敵は手強かったと、それだけの話なのですから」
よもや彼に仲間がいるとは思わなかった。
細い隙間に逃げ込んだ彼を追いかけようとして……引っかかって動けなくなったところを一斉に襲われたなんて、口が裂けても言えません。