Fate/stay night 
“The person who rebels against the destiny''
第八夜 〜三つの運命 中編〜


朝斗視点
屋上に来た僕は朝に確認した結界の刻印が書かれた場所に移動する。
未だにその刻印は禍々しい光を発している。
さて、壊す事も出来ないし何とか食い止める方法を考えないと・・・。
遠坂さん達がここに来るのも時間の問題だろう・・・。
そう思案をしてる時。

背後からとてつもない気配がした。

忘れもしない・・・あの男の気配だ!!
僕は後ろに振り向くと―――――




「―――――久しぶりだな、坊主」




蒼い鎧を纏った男・・・ランサーが笑みを浮かべていた。
それも、親しそうな声を出して。
すぐに武器を創ろうとしたが、ランサーから殺気が感じられなかった。

「どうして、ここに居るんだ?」
「何、この建物からサーヴァントの気配がしてな・・・。それを確かめに来ただけだ」
「サーヴァント・・・。アーチャーの事か」
「ほぉ・・・。何でそれを知ってるんだ、坊主・・・!」
「教えてもらったんだ。この『聖杯戦争』の事を・・・。勿論、サーヴァントもね」
「そうか・・・。って事はおめぇもこの戦いに参加する訳か・・・」
「従えるサーヴァントはいないけどね。でも、この前の僕とは違うから・・・!」
「・・・良い眼だ。確かにこの前よりか大きく変わったみたいだな」

ランサーが嬉しそうに笑う。
僕はその笑みに不快感が出なかった。むしろ、好感が持てる程だ。
あいつは殺し合いではなく、戦いを求め続ける方だ。
自分の力を試してみたいという感じだな。

「どうするの?ここであの時の続きをやろうって言うの?」
「当たり前だ・・・・・・と言いたいがな、そろそろ客人が来そうなんでまた今度にするわ」

ランサーの言うとおり、階段の方から足音が聞こえてくる。
きっと、遠坂さんとアーチャーだ。校舎の方を調べ終えたんだろう。
今気付かれるのは不味過ぎるな・・・。

「ま、この後アーチャーとやり合うので日を改めて・・・だな」
「そうだね。観戦させてもらうよ・・・二人のサーヴァントの戦い」
「フッ、勝手にしな」

そういうとランサーの姿が消えてなくなる。
その時、体に刻印が浮かび上がっていたのは気になるが・・・。
今は、隠れないと。
創造具現化マテリアル・アーク
鋼の蛇ダガー』を出した僕は朝と同じように屋上から降りる事にした。
だけど、最期まで降りていたら見つかってしまうので3階で降りる事にする。
          
3階の窓の鍵部分を斬り、校舎の中に入った。
武装消去スタンバイオン
鋼の蛇ダガー』を消した僕は息を潜める事にした。
迂闊に動けば、遠坂さん達に気付かれるからだ。
それにしても、気になるのは弓道場の明かりだ。
もし、生徒か先生が残っていたらあの戦いに巻き込まれる可能性がある。
そうなる前にここから離れさせないといけない・・・。
そう考えていたら。





屋上から突然、周りの空気が重くなる感覚・・・。





身に覚えのある威圧感が襲ってきた。
これはランサーの『ゲイボルク』だ。
以前にあいつがライダーさんと戦った時、あの紅き魔槍の力を実感している。
きっと、戦いが始まっているのだと確信した僕は急いで弓道場に向かおうとした時。
屋上から人影が落ちてゆくのを目にした。

「えっ?」

一瞬の出来事に理解できない僕はそれを確かめる為に窓の下を見下ろした。
するとそこには人影は無かった。
もしかしたら・・・校庭か!
すぐに校庭の方に目を向けるとそこにはランサーと遠坂さん、アーチャーの姿があった。



凛視点
まさか、こんな所でサーヴァントが待ち伏せていたなんて・・・。
正直、予想だにしなかった。
私の目の前にはアーチャーが庇う様に実体化している。
そして、私達に立ち向かっているのが・・・。

「ランサーの、サーヴァント――――」
「如何にも。そういうアンタのサーヴァントは・・・・・・アーチャーだな?」
「なっ――――!?」
「当たりの様だな。あの坊主の言う通りだな」
「坊主?あなたのマスターの事?」
「いや、嬢ちゃん達が来る前に先客がいたんでな。そいつがアンタのサーヴァントを教えてくれたんでな・・・。」
「!?・・・他にもマスターがいたなんて!」
「なんか勘違いしてねぇか?」
「・・・何よ?違うというの?」
「ああ。全く違う」

・・・あっさりと否定してくれた。
どういう事?マスターでもない奴がランサーと会話するなんて。

「そいつはマスターでも何でもねぇ・・・ただ・・・」
「?」
「生身の人間が俺達サーヴァントと戦える力を持っているって事だ」
「はぁ!?」

コイツ、何言ってんのよ?普通の人間が英霊であるサーヴァントと戦える!?
そんな莫迦な事があるわけ無いじゃない!!

「信じようが信じまいが嬢ちゃんの勝手だ。けど、嘘は言ってねぇからな」
「・・・・・・・・・」                         エモノ
「さて、話はこれぐらいにしておっぱじめようじゃねぇか、アーチャー。弓を出しな。これでも礼を弁えているんだ。それぐらいは待ってやる」
「―――――――」

アーチャーは答えない。
ただ、待っているんだ。私の言葉を・・・。
私はランサーの言葉に疑問を感じるがそれ所じゃない。
アーチャーに近寄らずに、その背中に語りかける。

「手助けはしないわ。貴方の力、ここで見せて」

「―――――ク」

それは笑い、だったのか。
私の言葉に応える様に口元をつり上げて、赤い騎士は超疾した。



朝斗視点
赤い弓兵が蒼き槍兵に目掛けて駆け抜けていく。
アーチャーの持つ武器は短剣だ。
だけど、その動きには躊躇も感じられない。
しかし、ランサーにとってそれは有利な条件となる。
長柄の武器にとって間合いを詰める事は自殺行為。
故に、長大の間合いをもって敵を制し、戦いを制するのが槍兵の戦い――――――――が
それはあくまで定石に過ぎない。
ランサーは槍の戦い方を極めている。
ライダーさんの戦いで既に把握をしている。
武器の使い道は一つじゃない。・・・けど、その一つを高める事により定石と言う概念を打ち破る事が出来る。
それが・・・ランサーの戦い方。
喉、肩、眉間、心臓・・・あらゆる急所を隙も無く、且的確に貫こうとする。
・・・僕はアサシンの戦いを思い出していた。
あいつの刀・・・いや、刀とは言い難い長身の武器もまた、同じ事が言える。
それの場合は『斬』を特化したモノ。
だから、あの時・・・『燕返し』と言う有り得ない攻撃まで生み出してしまう。
ホントに良く自分は生きて、撃退をしたものだな。
そう思っているとランサーが動きをみせた。
・・・あいつが繰り出したのはまさに閃光。
視認すら許されない。
眉間、首筋、心臓。
アサシンの剣撃を思わせる三連、全弾急所!!――――――――――――――――――が

それを二つの孤を描く光が弾き流す・・・・・・!!
アーチャーの手には二振りの短剣が握られている。
左右対称の中華風の双剣。
それは僕の創造イメージにある『二つの星』・・・『天凶星・地精星』の二振りの刀を思わせる物だ
正直に思う。あの二人の戦いに魅入られてしまったのだと・・・。
彼らの動きを鮮明に焼き付こうと必死になって見ていたんだ。息をつかせぬその戦いに・・・。
ランサーの槍が更に加速を上げ、アーチャーに襲い掛かる。
それは電光石火・・・。いや、それに当てはめるのは失礼になるかもしれない。
まるで・・・紅い流星群だ。
それを受けまいとアーチャーは二振りの短剣で受け流す。
白と黒・・・陰陽の短剣で紅き流星群に立ち向かっている。
・・・そこである疑問を感じた。
ランサーは紅き魔槍『ゲイボルク』一本に対して、アーチャーは陰陽の二振りの短剣を十何本も出している。
手放された短剣は蜃気楼のように消えて、また、彼の手に現われている。
一体、どういう武器なのだろうか?

僕の【創造具現化マテリアル・アーク】とは全く違う・・・。
もしかして、アーチャーの武器は『弓』ではなく武器を生み出す『能力』そのものが宝具なのか?
それが本当なら、『アーチャー』としての攻撃も出来る事になる。
・・・考え方を改めないといけない。
サーヴァントのクラスで判別したら思わぬモノが飛び出してくる。

「・・・間合いが開いた!」

ランサーも予想にしなかった筈だ。アーチャーが二振りの短刀で切り抜けた事を・・・。
全く、『アーチャー』としての攻撃を見せていないんだ。
途端、ランサーに動きがあった。

ランサーの周りから世界が凍て付くように殺気が広がる・・・。

急に悪寒が体中に走った。
忘れる訳が無い。これは・・・『ゲイボルク』の力だ。
あの夜、ライダーさんに向けようとした悪寒だ。
間違いなく、ランサーは仕留める気だ。
・・・また、この悪寒を感じる事になるなんて・・・・・・!?
なんだ?弓道場の方に人影・・・?

・・・ちょっと待って、あれは・・・・・・士郎!?
なんで、まだ学校に残ってるんだよ!
やばい!ランサーが気付いた!!
士郎は校舎に向かって走ってる。
急がないと殺されかねない!!
僕は急いで士郎と合流する為に階段を駆け下りていった。



士郎視点
「ハァ―――――ハァ、ハァ、ハ――――ァ」

走り詰めだった心臓が軋む。
気が付けば俺は校舎の中に逃げ込んでいた。
どうして街のほうに逃げなかったのか?
でも、そんな事を考えてる暇なんてなかった。

『逃げなければ殺される』

あの瞬間、それだけが頭の中を支配していた。
実際、赤い奴と蒼い奴が戦ってる所を見てまともじゃない事が解かっていた。
そして、あの時・・・蒼い奴が持っていた赤い槍に魔力が流れていく所を見た瞬間。
その空間が凍り付いた様に思えた。
だから、恐怖した・・・。
挙句の果てに、こうやって追われる立場になってしまったが。
あの時、もう一人誰かがいたような気がするけど・・・。
それがどんな姿をしていたかまでは思い出せない。
正直、あの二人以外を見てる余裕なんてなかった。

「けど、これでともかく――――」
「追いかけっこは終わり、だろ」

突然、前の方から声がした。

「よぅ。割と遠くまで走ったな、お前」
「―――――」

声なんてでない。
息なんか出来ない。
あらゆる思考が止まっているのに。
―――――ここで死ぬんだ、と実感した。

「逃げられないってのは、お前自身が誰よりも解かってたんだろ?何、やられる側ってのは得てしてそういうもんだ。別に恥じ入る事じゃない。」

フッ、と。
無造作に槍は持ち上げられ、そのまま。

「悪いな坊主。見られたからには死んでくれや」

槍が俺の心臓を貫こうとしたその瞬間だった。

「【スネーク・ディレイト束縛をかける蛇】ッッ!!」

俺の右横を鎖が風を切る様に通り抜け、蒼い奴の体に絡みつく

「ぐあっ!!!」
「なっ・・・何だ!?」
「早く逃げろッ!!」

突然、鎖が蒼い奴を絡みついたと思ったら声が聞こえた。
何処か聞き覚えのある声だが、そんな事を考えてる場合じゃない!
俺は窓を開けて外へと飛び出した。
ここが1階でよかったと本当に思う。
俺はこれが最期のチャンスだと思い、全力で走った。
今はただ、蒼い奴から逃げ切る事だけを考えて学校を後に家へと向かった・・・。



朝斗視点
・・・ギリギリの所で間に合った。
もう少し、遅ければ士郎の命はなかっただろう。
咄嗟に出した『鋼の蛇ダガー』がランサーの動きを封じる事が出来て幸いだった。
士郎は窓から飛び出ていったけど、まだ安心は出来ない。
何とかここで足止めをしないと・・・!

「ハッ!・・・坊主。いいタイミングで邪魔してくれたもんだな?」
「ああ。彼は僕の知り合いなんでね。そう簡単に殺させてたまるか!」
「本当に変わったな・・・。あの頃の坊主とは思えねぇ」
「言っただろう・・・、この前の僕じゃないって!」
「そうだったな。けど、一度ならず二度まで同じ失敗を繰り返す訳にはいかないんだよ!!」

ランサーの殺気がより強くなる。
だけど、ここで怖気づく訳には行かない。
僕はランサーに斬りかかろうとしたその時だった。

「・・・!?この気配・・・アーチャーか!」

多分、遠坂さんがランサーの後を追いかける様に命じたんだろう。
そうなると色々と厄介だ。そう思っていると・・・。

「どうやら、追ってが来た様だな。ここいらで退くとするか。・・・だが」
「!?」
「あの坊主を始末しておかないとなッ!!」

ランサーの手は何かを空で描くと光が現われ、そのまま僕の方へと襲い掛かってきた。

「うわぁっ!!」

その光を辛うじて避けた瞬間。
光は僕の立っていた場所に車が衝突した様な音をたてて弾け飛ぶ。
その床には大きな窪みが出来ていた。
あれを直撃していたら骨を砕かれていたかも知れない。
僕はランサーの方に目を向けた時には既に姿を消していた。
きっと、士郎の後を追いかけたんだ。
僕は士郎の後を追う為に窓から出る事にした。
今はともかく、ランサーに先を越されない為にも士郎に会わなくちゃいけない!
士郎の安否を思いながら、全力で駆けて後を追っていった。



凛視点
先程の爆発音はなんだったのだろうか?
アーチャーを先に行かせたのはいいけど、正直自分の愚かさを呪った。
確かに、魔術師の掟では目撃者を消すのが決まりになっている。
それがイヤだから目撃者を出さなければいいんだって、今までずっと守ってきたのに・・・。
校舎の中にはいた音のした方に向かうとアーチャーが立ち尽くしていた。
そこには床に出来た大きな窪みと開けられた窓だけだった。

「アーチャー、ランサーはどうしたの?逃げていった生徒は?」
「・・・いや、既に姿はなかった。生徒の方はこの窓から逃げていったんだろう」
「そう・・・。でも、この窪み・・・物理的の物で出来た物じゃないわ。これ・・・」
「大方、ランサーが魔術で作った物・・・否、狙いが外れて出来たのだろう」
「ってことは、ランサーは何らかの魔術を使えるわけね。でも、どうして・・・?」
「解からん。・・・どうする凛?このままランサーの後を追うか?」
「そうね。逃げられたとしても必ず殺すはずだわ。何としてもランサーを止めないと・・・?」

ふと、窓の傍に落ちていた手帳らしき物を見つけた。

「これって・・・生徒手帳・・・」

多分、ここから逃げ出す時に落として行ったんだろう。
私は手帳の中身を見る事にした。
上手くすれば保護する事は出来ると思ったからだ。
生徒の住所が書かれているページを開くとそこには信じられない奴の名前と写真があった。

「嘘・・・さっきの生徒はアイツだって言うの!?」

そこには『衛宮士郎』の名前と写真が貼られていた。
なんだってアイツがまだ学校に残っていたんだろうか?
・・・もしアイツが殺される事があったら目覚めが悪すぎる。
それに・・・桜にどんな顔をすればいいのよ!?
もし、殺されたらあの子はどれだけ悲しい顔するのか。
そんな事、絶対にさせてはいけない!

「アーチャー、今すぐ生徒の後を追うわよ」
「了解した。ならば急いだ方がいいな」

そういって、アーチャーが私の体を抱き上げ、窓の外へと飛び出した・・・・・・って、ちょっと待ちなさいよ!?何で私が抱き上げられているのよ!!しかも、お姫様抱っこォォォォ!!!?

「ちょ、ちょっとアーチャー!?」
「この方が早く追いつける。案内を頼むぞ、凛」
「そういう事じゃなくてッ!!!」
「暴れるな。落ちるぞ」

アーチャーの顔が驚くほど近くにある。
今まで女の子の夢とか乙女の恥じらいとは無縁の私が・・・こんな・・・こんなメルヘンチックな抱かれるなんて・・・。
この・・・莫迦アーチャー!!後で覚えておきなさいよ!!・・・ものすんごく恥ずかしいだから!!!
内心、混乱と動揺が落ち着かずに衛宮君の後を追いかける事になった。
ただ・・・誰もこの状態を見られない事を心底祈り続けた・・・。



士郎視点
とにかく走った。
自分でもどうなっているかも解からずに走り続けた。
何とか家まで戻った俺は居間に倒れ込むように横になった。
どうやら、桜や藤ねぇは既に帰った後のようだ。

「はぁ、はぁ、は―――ぁ」

学校から全力で走り続けたんだ。
心臓が破裂寸前まで大きく鼓動をして事がわかる。

「・・・・・・・・・」

何度か深呼吸をして落ち着かせる

「殺されかけたのは本当か」

俺がこうして生きているのは誰かが助けてくれた事だ。
あの蒼い奴に殺されようとした時に防いでくれたあの鎖・・・。
その後に後ろの方から聞こえた声。
あの声の主が俺を助けてくれた事。

「・・・・・・誰だったんだろうか?出来たら、礼を言わせて欲しいんだけど」

今では確かめる事は出来ない。
・・・でも、今はそれ所じゃない。
例え逃げたとしてもあの蒼い奴は追いかけて来る筈だ。
とりあえず、何か武器になる物を探さないと・・・。

カラン    カラカラ

「――――!?」

突然、屋敷の天井につけてある鐘が鳴り、明かりが消えてなくなる。
敵意や殺気を持った者に対して警鐘が鳴る、ぐらいの結界は張っている。
多分、アイツがここに侵入してきたんだ。
俺を助けてくれた人は・・・。
・・・屋敷は静まり返っている。
物音一つしない闇の中、確かに―――あの校庭で感じた殺気が、少しずつ近づいてくる。

「―――――っ」

背中には針のような悪寒。
幻でもなんでもなく、この部屋を出れば即座に串刺しにされる。
いい加減、慣れなければいけない。
殺されようとしているのはこれで二度目だ。
あの時の自分は何も出来ずにいた。
だけど、仮にも俺は魔術師としてこの8年間、絶えず何を目指して来たと言うんだ―――!
こんな所で終わる訳には行かない!!

「・・・いいぜ、やってやろうじゃないか!」

難しい事を考えるのは止めだ。
今は、アイツを叩き出すだけだ。

「まず、武器になる物をどうにかしないと・・・」

魔術師として出来る事は、武器になりそうな物を『強化』する事だけだ。
土蔵に行けばそれが山ほどあるが、ここから土蔵までの距離が遠い。

このまま、居間を出たときに襲われるとしたら、丸腰ではさっきの二の舞を踏む事になる。
難しいが、ここで武器になる物を調達しなければならないが・・・。あるとすれば・・・。

「藤ねぇが置いて行ったポスターしかないか・・・」

正直、肩の力が抜けた。
が、こんな最悪な状況なんだ。贅沢を言ってる場合じゃない。
ただ、力尽きるまで前進するだけだ。

「――――同調、開始トレースオン

自己の作り変える暗示の言葉と共に、長さ60cm程度のポスターに魔力を流す。
奴の槍に対抗する為にはポスター全てに魔力を通さなければならない。

「――――構成材質、解析」

自らの血をポスターに染み込ませるように、魔力と言う触覚を浸透させる。

「――――構成材質、補強」

『ポスター』と言うコップに『魔力』の水を注ぎ込み、溢れる直前。

「――――全工程、完了トレース オフ

ザン、とポスターと自身の接触を断ち、成功の感触に身震いした。
ポスターの硬度は、今では鉄並みになっている。
それでいて軽さはそのまま。急造の剣としては上出来だろう。



「巧く、いった―――」

強化の魔術が成功したのは何年ぶりだろう。
親父が亡くなってから一度も形にならなかったのが、こんな状況で巧くいくなんて皮肉な話だな。

「ともあれ、これで・・・」

剣を扱う事なら、それなりに心得ている。
両手でポスターを握り締める。
何とかして、土蔵に向かわなければならない。
あそこならこれよりまともな物が幾つかある。
俺が襲撃に備える為に身構えた瞬間。

「―――――!」

悪寒が背筋に走り、総毛立った。

いつの間にやって来たのか。
天井から現われたソレは、一直線に俺へと落下してきた。
頭上から滑り落ちてくる銀光。
それは脳天から俺を串刺しせんと降下し――――

「こ―――――のぉ・・・・・・!!」

俺は夢中で庭へと飛び出る様に窓をぶち破った。
そのまま、何回か転がった後、立ち上がりざま、さっきいた場所に目を向けると―――――
学校で会った蒼い男がそこにいた。
男の殺気は依然、衰えてはいなかった。
まるで獲物を狩るまで落ち着く事のない様子にも見えた。

「思ったより反応がいいな。あの坊主の知り合いって言うのも伊達じゃなさそうだな・・・」

なんだか親しそうに語りかけてきた。
こいつの言ってる『あの坊主』って誰の事なのか?
もしかして、俺を助けてくれた人を言っているのだろうか?

「だが、二度も助けが来ると思うなよ」

正面から紅く鈍い光が見えた俺は急造の剣で弾く。

「つぁ――――っ!?」

右腕に痛みが走る。

「・・・?」

余りにも一瞬の出来事だった。
無造作に、反応する事もなく男の槍が突き出された。
だけど、それを阻んだのは手に握られている急造の剣だ。
本来ならあの一撃で命を落としていた。
アイツはただの紙だと思っていただろう。
突き出された槍は、その神の剣に弾かれこちらの右腕を掠るに留まったのだ。

「・・・面白い芸当だな」

男の目は更に獣じみた眼光となり、こちらの動きを観察している。
・・・失敗した。
外に出て、そのまま土蔵に走り込めばよかったんだ。
今、目の前にいるのは常識からかけ離れた悪鬼だ。

「なるほどな。・・・微弱ながらも魔力を感じる。あの坊主の知り合いにしては出来すぎるものだな」
「――――――」

防げない。
あんな閃光めいた一撃は防げない。
相手の得物は槍だ。
せめて剣だったらどんなに早くても身構える事は出来る。
だけど、軌跡が線である『剣』と、点である『槍』。
初動さえ見切れない点の一撃を、どう防げというのか。

「いいぜ・・・・・・少しは楽しもうじゃないか」

男の体が沈み込む。

刹那―――――

正面からではなく、横殴りに槍が振るわれた。
顔の側面へと振るわれた槍を、条件反射だけで受け止める。

「が――――――っ!?」
「いい子だ、ほら次いくぞ・・・・・・!」
「っ・・・・・・!!!!」

今度は逆側からフルスイングでこちらの胴を払いに来る・・・・・・!

「ぐぅ―――――!!??」

それを受けまいと急造の剣で受け止めたが、そのまま後ろへと大きく吹き飛ばされる。
擦りつけられる様に背中から地面に落ち、剣も先の衝撃で折れ曲がる。
アイツが持ってんのはハンマーか!
構えていた両腕に痺れが襲ってくる。
・・・だが、それは大きなチャンスになった。
俺の後ろには土蔵があった。
あれで20m近く飛ばされるなんて思いもしなかった。
だけど、男はすぐさまやってくる筈だ。
俺は何とか立ち上がり、土蔵の扉により掛かった時。

「―――――」

迸る槍の穂先。
それを防ぐ事が出来ず、崩れ落ちそうだった体が槍を迎える――――――――――――が

「チィ、男だったらシャンと立ってろ!」

なんて悪運。
体が支えきれず、膝を折ったのが幸いした。
槍は俺の頭上、土蔵の扉を強打し、重い扉を弾き開けた。

「クッ・・・!?」

俺は四つんばいになりながらも土蔵へ滑り込む。
そこへ―――――

「それ、これで終わりだ――――!!」

避けようのない、紅い一閃が放たれた。

「こ・・・のぉぉおおお!!!」

それを防いだ。
棒状だったポスターを広げ、一度きりの盾にする。

「ぬっ・・・・・・!?」

広げきったポスターでは強度もままならなかったのか。
槍こそ防ぐ事は出来たが、ポスターは貫通され、途端にただの紙へと戻っていく。

「あ・・・・・・ぐぅ・・・!」

突き出された槍の衝撃で壁まで弾き飛ばされる。
床に尻餅をつきながらも、止まりそうな心臓に喝を入れる。
そして、武器になりそうな物を掴もうと顔を上げた瞬間。

「詰めだ。今のはわりと驚かされたぜ、坊主」
「―――――」

もはや、先などない。
槍はぴったりと俺の心臓に狙いをつけている。
学校でやられそうになったあの時の続きを思わせる物だ。

「しかし、解からねぇ。機転は利くくせに魔術はからっきしときた。筋はいいだが、まだ若すぎたか」

男の声なんて聞いてられなかった。
今目の前にある槍が突き出されれば自分は死ぬ。

「ま、あの坊主と比べれば、些か解かる方だったな。お前さんは多少魔術が使えるみたいだからな。
・・・もしかしたら、お前が7人目だったのかもな。だとしてもここで終わりだがな」

理解できない。なんでそんな目にあわなければいけないのか?
・・・・・・ふざけてる。
そんなのは認められない。意味もなく死ぬ訳にはいかない。
あの時、誰かが俺を助けてくれたんだ。
その時の人が俺を助ける為に自らがコイツの相手をしてくれたんだ。
こんな所で殺される訳にはいかない。
こんな所で死ぬ訳にはいかない。

「ふざけるな、俺は――――」

こんな所で意味もなく、お前みたいな奴に、殺されてやるものか―――――!!!!!










キィィィィィン










「え――――――?」

それは本当に・・・。

「なんだと・・・・・・!?」

魔法のように現われた。
眩い光の中、それは俺の背後から現われた。
思考が停止する。
その光から現われた姿は少女だった。
少女は俺に向けられていた槍を手に持っている『何か』で撃ち弾き、躊躇なく男へと踏み込む。

「――――本気か、7人目のサーヴァントだと・・・・・・!?」

弾かれた槍を構えると、少女は再び『何か』で一閃する。

二度火花が散った

剛剣一閃。

「クッ―――――!」

不利と悟ったのか、男は獣のような俊敏さで土蔵の外へ飛び出した。
少女は男を警戒しながらも、こちらに振り向いた。
土蔵の外から差し込む銀色の月光が、騎士の姿をした少女を照らしあげる。
聖碧の宝石のような瞳を力強く輝かせ、銀光の鎧に包まれたその少女は俺を見据えていた。
ただ、目前の少女は余りにも綺麗すぎて、言葉を失ってしまった。
そして、少女の口からある言葉をかけられた。





「・・・問おう。貴方が、私のマスターか」







あとがき

ついに・・・ついに、セイバー登場!!!
・・・・・・って、短ッ!!!!
ま、彼女は後編で活躍してもらいましょう!!
後、皆さんに一言。
本編の流れが思いっきり違っちゃいました_| ̄|○
でも、朝斗よ・・・ランサーと会話する様な関係になったのか?・・・と言う突っこみは無しで御願いします。後々、彼も活躍するので・・・(ぇ
それでは・・・

           Zain




管理人の感想

 おっ、学校で士郎が死ななかったですね。ということは凛は例の宝石を使っていないわけで、これが今後に影響してくるのかな?
 あんだけの魔力を秘めたブツを眠らせておくこともないだろうと思いますし。
 しかしそれにしてもアーチャーの能力をあっさりと察してしまいましたね、主人公の人。ランサーともいい勝負してますね、うむ。

 さて、今回ついにセイバーが出てきたわけですが、主人公の人は彼女を見てどういう反応を示すんでしょうか。そこら辺が後編の一番の見所になるんでしょうね。


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