Fate/stay night 
“The person who rebels against the destiny

第七夜 〜蠢く闇 前編〜


2月1日
アーチャー視点
攪拌されていた過去が再構成されて行く。
自分は何者か?それを思い出す・・・。
自分の中にある記憶・・・。
それは殺戮で彩られた地獄・・・。
英霊でもありこの世界の守護者・・・。
だが、そんなのは建て前に過ぎない。
実際は世界に仇する者たちを刈り取る死神・・・。
そう・・・・・・生きる者も、死に逝く者も、全てをなぎ払い殺し尽くす破壊者だ。
けれどそれが、その場所以外で生きる人々を守る為の行為ならそれでも良いと、自分に言い聞かせていた。
だが、自分の手が血にまみれる事よりも最悪なのは人間達の影にある『負』の醜さだ。

殺戮。嫉妬。欺瞞。狂気。破壊。悦楽。我欲。妄執。不義。怨恨。

あらゆる『負』を、私は見てきた・・・。
戦えば浮き彫りにされたそれを全て殺して殺して殺して殺して殺し尽くす。
その繰り返しだ。

・・・そう、私も世界を守る為に、自分の大切な人を失った・・・・・・。
否、壊したのだ・・・・・・それが『私』が生まれた瞬間だ・・・。
それが・・・信じていたものを自分で裏切ったのだ・・・・・・。
だからこそ・・・このチャンスを逃す訳にはいけない・・・。
あの時の『過ち』を止める為に・・・。
そして、『自分』を殺すために・・・。

それにしても・・・サーヴァントをなんだと思っているのだろうか?
不完全な召還のせいで半壊した部屋の掃除をさせるか?
しかも令呪を使って『命令服従』などという呪縛をかけるとは・・・。
だが、その魔力は本物だ・・・。
少しでもそれを叛こうとすると力が抑制される・・・
性格はともあれ、迂闊に下手な行動は出来んな・・・。
・・・・・・さて、片付けも終えた事だし・・・まだ名も知れぬマスターの為に準備でもしておくか。
・・・・・・それにしても、なんだ?
何か・・・違うものを感じる・・・・・・。
この戦い・・・・・・どうやら普通に始まるとは行かない様だ・・・。



朝斗視点
・・・・・・・・・なんだ・・・これ。
・・・・・・重い・・・・・・苦しい・・・・・・
凄く・・・・・・暗い・・・・・・。
まるで・・・・・・ヘドロの中にいるみたいだ・・・・・・
・・・?・・・・・・女の子・・・・・・?
・・・・・・あれは・・・・・・そうだ・・・・・・
あの夢で見た・・・・・・・・・剣士の女の子・・・・・・
でも・・・・・・あの時と違う・・・・・・
聖碧の瞳、美しく彩られた白銀の鎧、そして光り輝く剣・・・・・・
これが・・・・・・本来の姿なんだ・・・・・・
・・・・・・でも、なんだ・・・・・・あの剣・・・・・・
・・・・・・紅く・・・血のような色に・・・・・・変わっていく・・・・・・
・・・・・・・・・彼女が・・・・・・黒くなっていく・・・・・・
・・・あの黒い『影』は・・・・・・一体・・・?

〔あれが・・・全てを狂わせる・・・・・・元凶〕
元凶?・・・・・・あれが?
〔世界でも・・・止める事も出来ない・・・闇〕
君は・・・それを知ってるの?
〔・・・知ってる・・・けど、教える事が出来ないんだ・・・〕
どうして・・・?何か・・・・・・?
〔ボクが・・・ボクである事を・・・邪魔されているから・・・〕
・・・・・・邪魔?
〔ボクに出来る事は・・・君に頼るしかない・・・〕
声が・・・・・・消えてゆく・・・・・。
〔待ってるから・・・君が助けてくれる事を・・・〕




「うぅ・・・ん・・・・・・くっ・・・」

僕は苦しみから逃れるように眼を覚ました・・・。
・・・まだはっきりしない頭でどうなっていたかを思い出す。
・・・・・・そうだ、僕はアサシンとキャスターと戦って・・・。
その時にあの子供の姿を思い出す・・・。
・・・あの子の家族を・・・・・・あいつらが・・・!
その怒りが沸々とこみ上げて、意識をはっきりさせる。
・・・外は夜を明け始めていた。

「そうだ・・・あいつらと戦って、あの家を後にして帰ったんだ・・・」

僕は体を起こそうとした時、体に痛みと痺れが襲った。

「――――――ッツ!!?」

少しでも動かそうとしたら体全体が引き裂かれそうな痛み。指までも動かす事が出来ない痺れ。
どうも、昨日の戦いの影響なのか、かなりの負担が一気に出てきたみたいだ。

「・・・まいったな・・・これは・・・」

もう少し・・・眠った方がいいかな?
今の状況じゃどうしようもない・・・・・・。
僕は無理やりでも眠ろうと眼を瞑る。
起きたら動かせる事を願いつつ・・・。
あの子供の安否を思いながら・・・。



凛視点
朝からもの凄くだるい・・・
どうも、昨日の召還の影響で魔力を半分以上もなくなったみたい。
それに召還したのはセイバーではなくアーチャーだった・・・。
仕方ない・・・時間はずれるわ、召還陣が機能をしないわでこれまでもない不手際なのだから・・・。
そんでもってアーチャー自身もその影響で記憶が失っているというおまけ付き・・・。
しょっぱなから頭痛いわ〜・・・。
とりあえず、今の時間は朝の9時過ぎ・・・。
学校はお休みをしておこう・・・。こんな状態では満足に行動できないし、優等生ぶりするのも無理だ・・・。
それはそうと・・・今を見て正直驚いた・・・。
散漫していた居間が元どおりになって・・・いや、それ以上に綺麗になっていた・・・。
しかも、アーチャーが入れた紅茶が凄く美味しいときた・・・。
コイツ・・・一体何者なのかしら?
・・・なに感心してるんだろう?
今はアーチャーの記憶が戻っているか確認しないと・・・。

「それより―――貴方、自分の正体は思い出せた?」
「いや・・・未だに記憶が曖昧になっているようだ・・・」
「そっか・・・中々深刻みたいね・・・」

やっぱ、一晩じゃ元には戻らないか・・・。
仕方ない、ここは予定通りに外に向かうとしよう。

「まぁいいわ、あなたの記憶は追々何とかすることにして。アーチャー、着替えてくれない?」
「着替える?何をするつもりだマスター」
「街を案内するのよ。どうせ学校は休む事にするし、ここの大まかな地理を覚えた方が作戦を立てるのにいいでしょう?」
「そういうわけか・・・。それならマスターから魔力パスを切って貰えば良い。そうすれば我々サーヴァントは霊体化して人の目には映らなくなる」
「あ、そっか。召還されたって英霊は英霊だった。霊体に肉体を与えるのはマスターだから、私が魔力提供をカットすればいいんだ」
「そうだ。我々も霊体に戻る。そうなったサーヴァントは守護霊のようなものになる。レイラインで繋がっているマスター以外は観測されない。まぁ、会話や偵察程度なら支障はないがな」
「本気で便利な物ね。それじゃ早速出かけ―――――」
「それはいいが・・・マスター。君は大事な事を忘れていないか?」
「何?大事な事って?」
「・・・・・・全く、まだ本調子ではないのだな。契約において最も重要な交換を、私達はまだしていない」

等価交換の事だろうか?
だけど、サーヴァントは聖杯戦争に参加する事が報酬になる。
私達に必要な交換はもうない筈だけど・・・。

「本当に朝に弱いんだな、君は・・・」

なんかまた皮肉めいた事を・・・・・・って、そういえばコイツ、一度も言ってないなぁ・・・。

「あっ・・・。そうか、名前だ」
「やっと思い当ったか・・・。今からでも遅くはない、君を何と呼べば良いのだマスター?」

―――――コイツ、いい奴かも。
本来の使い魔の契約なら重要な物なのだが、マスターとサーヴァントにそんな親愛の情なんていらない物だ。
なのにアーチャーはそれを大事な物だと言う。
令呪と関係無しに共に戦う者としての信頼の証に他ならない。

「・・・・・・私、『遠坂 凛』よ。好きな様に呼んでも構わないわ」



アーチャー視点
「・・・・・・私、『遠坂 凛』よ。好きな様に呼んでも構わないわ」

トオサカリン
・・・懐かしい名を聞いた。
かつて、憧れていた女性・・・。共に戦った仲間・・・。
そう、まだ未熟な私にとって頼れる人だった・・・。
・・・だが、同時に後悔の念まで蘇った。
守れなかった大切な一人・・・。最期まで信じてくれた仲間・・・。
それを自分は守れなかった・・・。
忘れていた・・・。否、忘れようとしていた・・・。

「『遠坂 凛』・・・」

今は私のマスター・・・ならば守りぬこう・・・。
あのような事を繰り返さない為に・・・。

「・・・では『凛』と。・・・ああ、この響きは実に君に似合っている」

万感の思いを込めて・・・。されどその気持ちを悟られぬように、告げた。
なのに・・・どうしてなのか顔が赤くなっている・・・耳まで真っ赤だ。

「どうした凛?熱でもあるのか?」
「――――――なっ!なんでもないわ!ほら、さっさと行くわよ!!のんびりしてる暇なんてないんだからっ!!!」

なんだか、声まで裏返りながら怒鳴られてしまった・・・。
・・・・・・なんでさ?
不可思議な凛の行動に溜息を一つついて、彼女の後を霊体化してついて行く事にした・・・。



朝斗視点
僕は再び眼を覚ました・・・。
・・・というよりこれ以上眠れないからだ。
でも、それでも十分に休む事が出来たみたいだ。
痛みと痺れは先程と比べて幾分マシになってる・・・。
僕は体を起こし、洗面所の方へ向かう。
まずは身体の確認・・・。傷はどうやら塞がっている・・・。服は所々がボロボロになっているけど・・・。
次は『心』の確認・・・。こっちは安定している様だがあの『二つの星』のイメージがぼやけているみたい・・・。
あの声の言うとおり、まだ力が引き出してないみたいだ・・・。
・・・そうだ!あの子はどうなんたんだ?
僕は居間に行き、TVをつける。
丁度ニュースが始まった所で画面にはあの家が映し出されている・・・。
それは改めてあの時の光景が嘘ではない事を思い知らされた・・・。
あの子供は気を失っていたが命に別状はないと報じられた・・・。
・・・だけど、もう二度とあの子の『時間』は戻ってこない。
家族というそれまでの『時間』が止まってしまったのだから・・・

「・・・止めなきゃいけない・・・こんな・・・・・・戦いを・・・」

そう・・・サーヴァントによる戦いを・・・。
どんな目的があるか分からないけど、こんな悲しみを生み出すなら止めないといけない・・・。
誰かを守りたい・・・誰かの悲しみを止めたい・・・。
二度と・・・僕みたいな人を増やしたくない・・・。
失うのは・・・僕で十分だ・・・・・・。
・・・まずはキャスターとアサシンを探す事だ
あいつらは力を得る為に人の命を奪う・・・。
多分、ここ最近の事件はあいつらが関わっているはずだ・・・。

「まずは新都を調べてみるか・・・」

事件の殆どは新都側で起きている・・・。
なにかしらの手がかりが得られるかもしれない。
それに気が付いた事だがサーヴァントは夜に行動をしてる事が多い。
ランサーもライダーさんも夜に行動している・・・。
だったら、今のうち調べておいた方がいい。
僕はまだ、回復していない体に鞭をうって身支度をし出かけることにした・・・。



「うぅ・・・まだ体が痛い・・・。」
自転車で新都に向かっていたが満足にスピードが出せない・・・。
あの力は相手サーヴァントの能力に近いものが出せるみたいだけど・・・。
体は僕自身だから相当の負担がかかる・・・。
今後の訓練では自分も鍛えなきゃいけないようだ。
そんな事を思っていたら新都に到着していた。
まだ、新都には出勤途中の人たちが見かけられた・・・。

「とりあえず・・・何処を調べようかな?」

調べる所を探していたら、見かけた事のある姿を見つけた。

「あれって・・・遠坂さん?」

何でこんな所にいるんだろう?
そもそも、学校は休みじゃないはず・・・。
僕は不思議に思い、彼女の後を追いかけた。



彼女は冬木中央公園にいた。
なんだか学園であった感じではない事に気付いた。
どうも何かに警戒しているようだ。
・・・僕はそれを振り払うかのように声をかけた。

「遠坂さん、どうしたんですか?こんな所で・・・」

遠坂さんがそれに気付き、振り向いた瞬間、射殺すような目つきをされた。
・・・正直、怖かったです・・・正にメドューサに睨まれた様に・・・。

「さ、榊・・・君・・・?」
「お、おはようございます・・・。」

遠坂さんは何か慌てた感じだ・・・。
この人、不意打ちに弱いのかも・・・?

「おはよう・・・こんな所で会うなんて奇遇ね・・・」
「そうですね・・・って、学校はどうしたんですか?まだ休みじゃないはずですが・・・」
「えっ!・・・あ、いや・・・私、今日は調子が悪いから休みにしてるんです・・・」
「ふ〜ん・・・でも、それだったら家で休んでればいいのに・・・」
「あ・・・え・・・と・・・」

なんかこれ以上問い詰めるのは可哀想だからやめておいた方がいいな。

「・・・・・・解かりました。深く追求をする事はやめておきます」
「えっ?」
「遠坂さんにも何か事情があるんですし・・・ね」

僕は首を傾げて話す。
遠坂さんもなんだか調子を取り戻せない感じだ・・・。
・・・それになんだろう・・・誰かの気配がする・・・少なくとも人間じゃない・・・。

「それじゃ、僕はこれから用事があるのでこれで失礼しますね」
「え、えぇ・・・」
「それと、気をつけてください・・・。ここの所、変なことがおこっていまし、殺人事件が起きましたから・・・。」
「本当なの・・・それ?」
「ニュースでやってましたよ・・・深山町の交差点二丁目で起きたって・・・」
「・・・ご忠告ありがとう・・・気をつけるわ・・・」

僕は遠坂さんと別れ、公園を後にする・・・。
未だに気配は消えずにいたが・・・なんだか見られている感じだった・・・。



アーチャー視点
「あ〜、驚いたぁ・・・まさか榊君に出会うなんて・・・」

凛は動揺を未だに抑える事が出来ない様だ・・・
魔術師としては出来てはいるんだが・・・。些か突然のトラブルには対処しきれないものもある様だ。

「凛、彼は何者だ?」
「うん?あぁ・・・彼は『榊 朝斗』といって私の学友の知り合い。まだ、そんなに親しい訳じゃないから詳しくはわからないけど」

サカキアサト・・・?
どういう訳だ?私の記憶にはその様な名前はない・・・。
むしろ、彼はどこかで感じた雰囲気がある・・・。
そう・・・あの忌まわしいモノに・・・。

「ちょっと、アーチャー・・・何黙ってるのよ?」
「・・・あの男を注意した方がいいだろう」
「は?何でよ、別にあの子は魔力も感じないし、何よりマスターになるなんて有り得ないと―――」
「奴は私の気配に気付いていた・・・。間違いない・・・」
「!?・・・それ、本当なの?」
「ああ・・・マスターではないが、危険な事は変わりないだろう・・・」
「嘘・・・あの子が・・・?」

凛は驚きを隠せないようだ・・・。
それに・・・魔力こそ感じられなかったが『異質』な力は感じられた。
どうやら一筋縄ではいかない様だ・・・。

「・・・アーチャー、もしあの子が邪魔だてするようだったらどうする気なの?」
「・・・場合によっては殺すかも知れんが・・・とりあえずは様子見をした方がいいだろう」
「・・・・・・わかったわ。けど、あくまで最期の手段よ・・・それまでは手出ししない事・・・いいわね?」
「・・・・・・了解だ、マスター」

凛は渋々了解してくれた様だ・・・。まだ納得してない様だが・・・まあいいだろう・・・。
いずれ、あの『異質』の力を調べなければならないな・・・。



朝斗視点
あの後、新都の様々な所を見てまわったが何の手がかりを得る事は出来なかった・・・。
さすがに新都のあらゆる所をまわったせいか時刻は既に夕方4時を過ぎていた。
これ以上の探索を行うとキャスター達に遭遇しかねないと判断した僕は新都を後にする。
・・・そういえば士郎達に会ってないなぁ。
昨日からまともに会ってないし、連絡も入れてない・・・。
心配してるだろうなぁ・・・。電話ぐらいしておいてもいいかな?
そんな事を思っていながら自転車を転がしているとふと何らかの視線を感じた。
僕は自転車を止め、辺りを見まわした・・・。
・・・でもそれを見つける事はなく、僕はそのまま新都を後にした。
中央公園で感じた物とは違い、恐ろしく冷たい物だった・・・







あとがき
今回はちょっと筆休みな物でしたがどうだったでしょうか?
朝斗の戦いへの決意もちょこっと書きましたが所々に物語に関わる事も書きました。
皆さんにそれがわかってくれて覚えてくれるか・・・(焦)
まだまだセイバーは出てこないけどもうじき出したいな・・・。
その前にまだ、色々書かなきゃいけない・・・(士郎の令呪とかランサー戦とか・・・)
あぁ〜〜どうなるだろうか・・・。
不安でたまりません・・・。
それでは・・・
                                    zain




管理人の感想

 ふんむむむ……アーチャーが登場しましたけど、なにやらその過去が重たいようですね?
 そのエピソードが後で語られるか否かで結構話が左右されるような、大きいものではないかと思っているのですがいかがなものか。
 あとセイバーについてもなにやら謎めいたお話がありましたねー。
 朝斗の夢の中に出てくる謎の坊ちゃん、なんだかんだ言って彼がキーマンなわけですけど、もしかして逆行風味な人だったり?


 zainさんへの感想はBBSまでよろしくお願いします。


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