「おはよ〜!!  ……って、シロウったらやっぱり土蔵で寝てるのね」

 朝、士郎の部屋にて、イリヤは不機嫌そうに仁王立ちしていた。

 相も変わらず何も物が無い部屋だが、そこにある持ち主の心境のせいか居心地はいいものだ。……ある意
味、ここはイリヤにとっての聖域(実は時々こっそりココでお昼寝をしている)でもあるのだがそれはさて
おき。

「セイバーもいないということは……もしかして……」

 士郎の隣の部屋を覗いても、そこにいるはずの人影は無い。それという状況を吟味し、イリヤは……。

「面白いものが見れるかも♪」

 スキップしながら土蔵に向かった。
























                    剣は鞘と、鞘は剣とともに
 第八話 魔術使いと剣士の日常(T)














「本当に何してたのかな〜? 土蔵なんかで二人抱き合ったまま寝てるんだもん」

「……」

「……」

 なんというか……朝一で襲撃をかけてきたイリヤに昨晩からそのまま寝てしまった俺たちを見つけられて
いきなりでっかい弱味を握られてしまっていたりする。

 それとイリヤ。そんな赤いあくまみたいな笑顔はよくないぞ。そんな顔をするなんてお兄ちゃんは悲しい。

 と、イリヤは突然ふう、と呆れたようなため息をついた。

「あのねシロウ。他の人はどうだか知らないけど私はセイバーとシロウが仲良くなろうが深い仲になろうが
全然構わないのよ? だって私はお兄ちゃんの妹でしょ? 第一私、セイバーは嫌いじゃないもん」

 ……。驚いた。

 唐突な大人のセリフに俺は呆然とイリヤを見詰めていた。

「む〜。シロウ、私の格好が変わってないからって年齢まで変わってないと思ってない? あれから七年経
つんだよ!?」

 あ。そうか。

 六年前。イリヤは元々ホムンクルスとして受けた生のため、あまりにも短いその生涯を閉じようとしてい
た。が、そこで立ち上がったのはわれらが遠坂。

 曰く、折角出来たヘッポコじゃない魔術師仲間を失いたくないなどと言ってはいたが、それが友達を失い
たくないという遠坂の本心の照れ隠しだとは重々承知していた。

 で、遠坂は書斎に篭り膨大な数の本と連日死闘を繰り返し、気がつけばイリヤは冬木市の霊脈に絡みつい
た霊体みたいな存在になっていた。

 原因は、不明。

 ココ一番で発揮される遠坂のポカが、その原因の一つだと分かってはいる。

 実験の最中に薬品の調合を間違え(暗かったから色が変わってたのを忘れてたらしい。他にも寝不足、疲
労、プラスして遠坂のポカ癖)爆発。偶然その場に居合わせたイリヤに大量に謎のクスリが降りかかる結末
となった。が、それが一体どういう効果を引き起こしたのか、イリヤは近場である冬木の霊脈に根をおろし、
今でも元気に生きて(?)いる。

 ……第三魔法に近い所業だと思うのだが、すでにその方法は分からない状況であるし、なによりこの状態
になると『冬木』という場所から出られなくなってしまうというオマケつき。

 更に言うなれば、聖杯を破壊した事で生じている魔力の淀みの在るここでないと成功しなかったことらし
い。

 故に今のイリヤは、半分人間半分霊体というなんとも中途半端な存在になっている。

 が、本人はそんな状態をそれなりに気に入っているらしく、その自分の特徴を生かして藤ねえを筆頭に悪
戯をする事が俺がココを出て行くまでの日課だった。

「でも私は今は人間じゃないし、セイバーも厳密には人間と違うから二人同時に手を出してもOKだよ?」

 ……。

「……イリヤ、朝一番にそういう冗談を言うのは良くないぞ」

 ため息をついて俺がそういうと……何故かセイバーとイリヤは顔を近づけて話しはじめた。

「……ね? シロウったらこんな感じでずーっと朴念仁だったんだから。凛や桜が報われないわよ」

「ソレは貴女もではないのですか? イリヤスフィール?」

 なんだかよく分からんが……、

「俺なんか悪いのか?」








「せいっ、はっ、せやっ!」

「ぐ、ぐぐ、ぐぐぐっ!」

 目にも止まらぬセイバーの連激を、必死の思いで受け止める。

 朝の日課であった鍛錬である。

 昨日やったのは、あくまで俺の実力を見るためのセイバーの真剣勝負だったために俺は手も足も出ずに完
敗したわけだが、今日のはセイバーは訓練用に実力を抑えてくれているため、俺ぐらいでも防戦をできるも
のであった。

 が、だからといって防戦一方で良いわけではない。

 巧みに打ち込まれる竹刀は、徐々に俺の逃げ場を塞いでいき最後はかわしようの無い一撃を見舞われるか
らだ。

 故に、俺も出来うる範囲でセイバーに反撃しなければならない!!

「っは!」

 袈裟切りに振られてくる竹刀を最小限の動作で受け流そうとし……、想像以上の力が加えられていたため
動作が大きくなる。―――失敗だ。

 流れるような動作でセイバーは次の一太刀を逆袈裟に打ってくる。

 後ろに引いてかわせる……速度なんかじゃない!!

 精一杯足を踏ん張らせ、受けた衝撃で後ろに吹っ飛ばないようにする。

 が、やはり見立てが甘かったらしく、一撃を受けた俺の身体は大きく後ろに引いていた。

「せいっ!」

 無論のこと、そのせいでがら空きになってしまった胴を、セイバーが攻めないはずも無かった。

 スパーン、なんて小気味いい音ではなく、どすっ、と鈍い音が響く。

 ついでに俺の身体は吹っ飛んで、道場の壁に叩きつけられる。……正しくふんだりけったりだ。

 いやまぁ、吹っ飛んだのは自分の意思だけど。

「ふむ、シロウ。これ以上の全力は身体に負担をかけかねませんよ?」

 胴が痛くて起き上がれない俺に、セイバーの一言が降ってくる。

 聖杯戦争中の鍛錬は、俺の意識が落ちることが一種の休憩みたいなものを担っていたのだが、今の鍛錬は
こんな打撃を数回入れられても落ちなくなってしまった俺の意識のため、打ち込まれながらもすぐに立ち上
がる、ということを繰り返していた。

 後セイバーがかなり本気で入れてくれてることも一躍かってくれてる。……まぁそう言ったのは俺だし。

 故に、限界を考えずに動かした体の節々がちょっと痛い。魔術行使はしていないので、すぐに収まると思
うけど。

「お疲れ〜」

 そう言って今まで見学していたイリヤが、唐突に抱きついてくる。……ってこら。

「おいイリヤ。今の俺、汗だくだぞ? 離れとけって……」

 二時間に及ぶ鍛錬は、俺の身体をヒートさせ、汗をダラダラ流している。

 一方のセイバーは相変わらず全く汗をかいたように見えないのだが……何故に睨んでいらっしゃるのでし
ょうか?

「いーよー、別に。シロウのなら汗舐めてあげてもいいんだから」

「よくない」

 そういう事はやっちゃいけないってのと、セイバーさんがものすごい目でこっち見てくるから。

 イリヤ、朝からやけに俺に絡むようなきがするんだけど……。

















 後書き
 幕間大好き人間きつねです。
 今回は士郎君とセイバーさんの間にイリヤが入ってお送りしました。
 あと士郎君の朴念仁炸裂です。
 日常風景って、いいと思いません?

 ついでに……二人は土蔵で純粋に寝てただけですよー?




管理人の感想

 あわわ、イリヤが生きてる理由、なんかすごいですね。つか、めちゃですね。
 まあ、ギャグチックなんでご本人わかっててあえてやってるんだと思いますけど、さすがに説得力は皆無ですね。とりあえずその辺はスルーなのかな。

 さて、日常話は私も好きですしイリヤも好きですし、内容も悪くないのですけど、今回話の切り方がえらく中途半端なような気がします。このエピソードはこれで終わりなんでしょうか? だとしたらちょっと分量不足かも。続くのだとしたら、このまま最後まで書くのが吉でしょう。
 要するにまあ……短いです。なんかとあるエピソードの内の、起と承の最初を見てるかのような印象でしたー。


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