「あんたって進歩してるの?」

「む、いきなり面と向かってそれとは失礼じゃないか遠坂?」

 セイバーとシエルさんが手合わせをはじめて、俺は道場の隅で遠坂と並んでギャラリーと化す。

 その時に遠坂はこんな事を言ってきたのである。

「だってあんた、セイバーがいたときといないときじゃ全然実力の伸びが違ってたじゃない。それでさっき
のあれでしょ? 聞きたくなるのも当然だと思うけど」

 いやはや……、流石は赤いあくま。言う事成す事容赦ない。



























                  剣は鞘と、鞘は剣とともに
   第四話 衛宮の家に集まろう
                               作:銀きつね













「……しょうがないだろうが。実戦じゃ結局俺の付け焼き刃の技術なんか役に立たないからな……。だから
俺は投影した剣の使い手の技術で今まで立ち回ってきたんだ」

 俺の投影は普通の投影とは訳が違う。

 俺自身は担い手の技術に同調でき、投影した物は永続的に存在する事が他の投影とは違う点だ。

 その際の俺の技術の向上は、体の強化ではなく技術の強化である。

 『同調、開始(トレース・オン)』という俺の強化の呪文は、この投影の『同調』から漏れた魔力を物に
コーティングする技術なのだということに気がついたのは、ヨーロッパでのことだった。

 ……詳しい説明は長くなるので省略するが、結局俺の魔術は『剣の投影』というその一点から発展させた
ものしか使えないのだ。

「ふーん……」

 納得したのかしてないのか、微妙な声を遠坂は上げる。

 ちなみにポーズは、『私は今考えてるの』とすぐに分かる左手の甲を口に当てるいつものポーズだ。

 ……まぁ自分でも分かってる。

 俺の魔術がどれだけ使い勝手が悪いかなんてことは身にしみているのだ。何故ならば、結局『剣の投影』
というものに集約しなければいけない魔術しか使えないのならば、どれだけ『強化』を応用しようとも『治
癒』などにはなりはしないのだ。

 ……俺の投影は『創造』ではなく『模倣』(いやまぁもしかしたら自分のオリジナルの剣を創る事が出来
るのかもしれないが、今までそれに成功した事は無い)。ならば結局は、『同調』なんてものも結局は担い
手の真似事に過ぎないのだから、『俺の本気』などというものは何処にあるんだろう……?

 そう思って、俺は纏っている赤い外套にかける手の力を強めた。

 借り物だらけの衛宮士郎。では本当の自分は何処にある?





 シエルさんとセイバーの手合わせは凄まじい物だった。

 特にシエルさんは、人間の限界に挑戦しているとしか思えない能力だった。……更に信じがたいことに、
それで全盛期よりも力が落ちているなんてことを言ってるのだからなんかこう、泣けてきた。

 遠坂あたりは、教会の人間と自分を比較する方がおかしいなんて言ってたが、そこはそれ、ささやかな男
としてのプライドという奴である。

 ……まぁどうせ既にセイバーと遠坂に負けてる手前、そんなもんほんとーにささやかでしかないのだが。

 まぁ、それはおいておいて。

 折角だから晩御飯をシエルさんにご馳走し様かとしたのだが、すでに家に作り置きがあるらしく、放って
置くと大事な具材を同居人に根こそぎ食べられてしまうからといって帰ってしまった。

 しかし……料理を食べられるならばともかく具材を根こそぎ食べられるとは一体……?

 些か不思議に思う点もあったがそれならば晩御飯も三人なんだなと結論付け、いざ厨房に立った時だった。

「こんばんわー! セイバーちゃん! 晩御飯できてる〜!?」

「お腹すいた〜!!」

 玄関先から虎とこあくまの声が聞こえてきた。






「凛、止めなくて大丈夫なのですか……?」

 がっくんがっくんとタイガに揺さぶられているシロウは、最早意識を失っておりまともに返事を返すこと
はできない状態である。

 ……なんだか段々と顔が青くなっているような気がしますが、タイガはシロウを殺すつもりではないと自
分に言い聞かせる。

「いーんじゃない? あの二人にとっても五年ぶりなんだし。少しは好きにさせてあげたら?」

 少し、ですか?

 イリヤスフィールの腕は完全にシロウの首に極まっていますし、タイガのそれは正しくカクテルを振り回
すシェーカーの如くなっているんですが……。

 ああ、シロウの首がまるで乳飲み子のように……。

「しかし……あれでシロウが落ちてしまったら彼の晩御飯が食べられなくなる……」

 見るに見かねて、私は凛にそう諭す。

 誠に不本意ながら、凛もシロウも私が大食いであると言っている。それに……家計簿をつけてみた時の出
費における食費の割合というのも……ごにょごにょ。

「む、あいつのご飯は美味しいのは確かだからね……。今日一日ぐらいは味わいたいし……」

 私のセリフに何か共感できる事があるのか、凛は少し考えてからすっくと立ち上がる。

「ま、弟子の窮地を助けるのも師匠の勤めだしね。……でもセイバー、士郎が心配ならば心配って照れ隠し
しないでそう言いなさいよ」

 ……ほっといてください(照)。













 後書き
 最後の方のセイバーさんの台詞は、本音半分建前半分ってやつです。
 どっちにしたってセイバーさんは食いしん坊である事に変わりが無いですから(笑)。
 さて、次回は遂に虎とこあくま登場。
 イリヤの寿命云々に関して、皆様に納得してもらえるかちょっと心配です……。
 んで、前回ステータス云々に関して管理人さんから耳の痛い一言をもらいました。
 それを聞いてなんか自分の未熟さ、というか馬鹿さ加減を痛感しましたのでやめにします。





管理人の感想

 こう、幕間、という感じのお話でしたね。最後の照れてるセイバーとか、可愛らしくて良い感じです。
 でも、贅沢言わしてもらえばもうちょっとたっぷりと楽しませてもらいたかったかなぁ……
 シエルとセイバーの鍛錬のシーンとか、帰ってきたイリヤと藤ねえとか。イリヤと藤ねえのところなんかは、場面の展開的にはあれでありなんだけど、ほのぼのシーンが楽しいだけに、ちょっと惜しいと感じるのですよう。
 特にイリヤ、ってのがもう、もったいなくてもったいなくて……


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