深い深い闇が広がる公園。今日は何故か電灯もその光を宿してはいない。

唯一光を放つのは空に悠然と浮かぶ月。今夜の月はやけに紅かった。

「やあ、やっぱり来たんだねセイバー」

闇の中から志貴が現れた。黒い服装の彼も月光に照らされてその姿がはっきり見えた。










                 夜と剣の幻想曲SYMPHONY-12   騎士










月明かりに照らされた公園の下、私と志貴は対峙していた。あのときの美しい金髪の女性は見当たらない。

「さて、立ち話もなんだから座らないか?」

と、志貴はベンチへ私を促す。が、

「結構です。横から攻撃されても厄介ですし、あなたと共にいるべき朱い月がいません。不意打ちをされたらそれまでです。」

それにと付け加え、

「呼ばれた身である私がそのようにするなど危険すぎます。」

と一蹴した。

「御尤も」

すると、志貴はこの反応がわかっていたのだろう、すぐに「じゃあ、このまま話そうか」と妥協した。

「で、用とはいったい何なのですか?」

私は強気に問うことにした。志貴の真意をつかむために積極的に行ったほうがよいと判断したからだ。

「まあ、急かすなよ。それよりも確認したいことがある。お前は本当に俺の知っているセイバーなんだな?」

「ええ、もちろんです。あなたが馬鹿なことをする前に連れ戻しに着ました。」

すると、彼が一瞬ものすごい形相で睨んだ気がした。馬鹿なことという言葉に反応したのだろうか?

浴びせられる殺気に私は思わず体を強張らせた。

しかし、それは一瞬のことで、すぐにもとのニヤついた笑みに戻った。

「そうか、まさか本当に追ってきたのか。いやはや、あきれを通り越して感心するね。そんなに俺を連れ戻したいか?」

クックと、嘲るように問いかけてくる志貴。相変わらずの表情からは彼の心情がまったく読み取れない。

「志貴、この地の聖杯ではあなたの望みは叶えられない。」

と、一息つき、彼の目をしっかりと見て

「真祖の姫はこの方法では救えないのです。」



・・・冷たい風が流れた気がした。明らかに緊張した空気が、互いの沈黙をより長く感じさせる。

そして、沈黙を志貴が破った。・・・彼は笑っていた。

「まさか、そんなことまで知っているなんてね。先生やゼル爺さんから聞いたのか?」

志貴は笑う。私が告げた一言によって壊れてしまったのかのように笑いつづけている。

「はははっ、わかってるさそんな事。結果も原因もね。」

志貴は多少笑いやみ、体勢を直してこちらを向いた。

「大丈夫だよセイバー。俺にはこの目がある。そうだろう?」

志貴は自らの目を指す。

「それにしても皮肉だな。いつもこんな目なんてなければいいのにって思っていたこの眼。なのに結局最後に俺はこの眼に頼って

 しまう。」

自嘲するように志貴がつぶやく。その瞳に何が映っているのか、私にはわからない。わからないが、

「そんなことをすればあなたが消えてしまうかもしれないのですよ。あなたが消えて真祖の姫が喜ぶとでも思っているのですか。」

と、言い放った時、今まで味わったことのない冷たい感覚に襲われた。

「だまれ、知った風な口を聞くな!」

志貴のカンに触ったのだろう、珍しく怒鳴り声を上げた。

「・・・まあいい。もともと用があるのはこっちなんだ。」

自制が聞くのはさすがといったところだろうか。

私はやや、緊張しながら志貴の次の言葉を待つ。

「それと、その前にもうひとつだけ。ほかにも来てるやつはいるのか?」

私は少し考えたが、ここでうそをついても仕方がないと判断した。

「そうですね、誰が来ているとまではいえませんが、私のほかにも来ている人がいるのは確かです。」

ただ、と付け加えて

「本人にはまだその記憶がありません。いずれ、浮かび上がってくるでしょうがそれは個人差があるのです。」

そうか、と言って志貴はなにやらうつむいて考え込み始めた。

ふと気づいた。月光が強くなってる気がする。神秘的な光に思わず心が踊る。

しかし、それでも志貴の真意はいまだ浮かび上がることはない。

「ふむ。大体今の状況はつかめた。さて、それでは本題といこうか。」

瞬間、志貴の口がいやらしく歪んだ。彼は左手を己の耳元にもっていき、右手をポケットに突っ込んだ。

そして、鋭い殺気と共にこう言い放った。

「君は危険だ、セイバー。なあに、簡単なことさ。・・・ここで死んでくれればいい。」

それと同時に志貴は右手を月に目掛けて高く掲げた。その手には彼の愛用の短刀が握られている。

ばっ!

そして、志貴が右手を掲げると共に背後にナニカが現れた。

(隠れていた?いや、違う。確かにこの公園には私と志貴しかいなかった。アサシンでもない限り気づかないはずはない。)

となると考えられるとしたら・・・

「不思議か?剣の英霊よ。いったい妾はどこにいたのか、と。」

高貴な、とても美しく、透き通った女性の声が背後から響いてきた。

ふっ、と微笑が聞こえてきたかと思うと既に彼女(?)は背後にはいなかった。

気づけば目の前の志貴の隣に彼女がいた。その惚れ惚れするほど白い手は、志貴の右手に添えられている。

(あの時の!)

自然と体がこわばった。認めたくはないが、目の前の敵に圧倒されている。

「単純なことよ、2・300メートルほど跳んできただけ。不思議でもなんでもない。ただ、動いただけだ。」

と、つまらなそうに金髪の美女は肩に掛かった長髪をうっとおしげに後ろに払った。


彼女の紅い瞳が私を見つめる。恐ろしいほど艶やかなその瞳。思わず魅了されそうになる。

そうならないのは単に彼女が、今の状況にさほど関心がないからだろう。

それは、無表情な真紅の瞳からたやすく読み取れた。

「・・・何のつもりだ、朱い月。まだ、お前の出番ではないだろ?」

その言葉にはっとなる。

なんということだ。このいつ仕掛けられるか分からない中、志貴のことを失念していた。

それほどまでに強烈な存在ということか、彼女は。

「何とは?妾の行動を縛るのはほかでもない妾のみ。

 志貴。貴様の邪魔をするつもりは無いが、いかんせん、そこの騎士に興味が沸いてな。」

金色の髪が流れ、舞う。

その赤の両眼がまっすぐ私を見つめる。

既に、志貴・・・いや、周りの景色、冬の肌寒ささえも知覚できていない。

一歩、また一歩。

彼女が歩み寄る。

その度にこの身にのしかかる重圧が増していくようだ。・・・事実、明らかに増大している。

「騎士王よ。貴様に問う。・・・虚言はゆるさんぞ。」

「!」

気が付けば、目の前に彼女は立っていた。

月光を背に威風堂々と佇む彼女は、まさしく月の姫と敬称するに相応しいと感じた。

「貴様はなぜ、ここにいる。」

その問いは無論、単純な意味でないことは明らか。

「志貴を連れ戻すためです。」

「ふむ、ではなぜそう思う。何が貴様をそうさせるのだ。」

・・・・・・・・・・

「―――――分かりません。」

「は?」

いままで崩れなかった無表情が初めて崩れた。・・・・・・しかも面白いお顔で。

「貴様・・・・・・・・・・・」

「私は、・・・・・・正直分からない。自分の気持ちが。情けない、こんな器の小さな人間が王などをやっていたのだから。」

「・・・・だが、私は思う。志貴はここで終わってはいけない。そして、志貴を終わらせたくないと思う私がいる。

 理由等無い、私は自分のやりたいことをしているだけだ。」

・・・・・・・・・・・・・

沈黙。

声を発したおかげか、先ほどと違い大分周りが見えるようになってきた。

志貴は・・・いる。先ほどと同じ位置に、包帯を目に巻いたまま彼は無表情で佇んでいる。

そして・・・

「ふ、ふふふ。」

彼女は、既に目の前にはいなかった。

志貴のソバに、元通りの位置にいる。

「志貴、悪いが妾はこの騎士王とは戦わない。やるというのなら止めぬが、・・・・・・まあ好きにするがよい。」

そして、彼女はベンチへと腰を下ろした。

「・・・・・・はあ、これだから気まぐれなお姫様は、っと。(これ以上は危険か)」

志貴はすっとナイフを服の中にしまった。

「興ざめだ。今日はお開きとしようか、セイバー。」

そういうと志貴は立ち去ってい・・・・・・

「うむ。ではな、騎士王。また会おう。」

「おい、こら・・・・・くそ、離せよっ」

訂正、朱い月に抱きかかえられて―――俗にいうお姫様抱っこ――――去っていった。

そのカオは今までみたことが無いくらい真っ赤に染まっていた・・・









あとがき
つは、久しぶりにかいたから変な感じです。



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