いけいけ僕らの小次郎君 そのいち 立志編?


 深夜、柳洞寺へと続く山門で。

「ふふふ……」

 サーヴァントであるキャスターが聖杯戦争のルールを破り、サーヴァントを召喚しようとしていた。

(ああ、これが成功すれば…宗一郎様とのラブラブな生活が送れる)

 自分の新しいマスターとの幸せな時間を想像するキャスター。

 想像の中で、葛木は始終笑顔を浮かべ、キャスターは聖杯の力を得て、この世に新たな命を手に入れて彼の子供を身篭っていた。



 …しばらく一人で悦に浸っていたが、はっと我に返り。

「…ええっと、そろそろ頃合ね」

 自分がもっとも魔力が高まる時刻が近付き、召喚の準備をする。



「――――――(召喚)」

 保有スキルである高速神言で、召喚の詠唱を一工程(シングルアクション)で完成させる。


 ――――瞬間、門を中心に光が包み込む。



「っ…、一応成功のようね」

 光から目を護りながら呟くキャスター。



「肝心のサーヴァントは…?」

 光が収まり、再び暗闇に包まれる山門で、キャスターは自らが呼び出したサーヴァントを探す。



 だが。



「……いない?」

 辺りを見渡してもサーヴァントのサの字も見つからない。

「ま、まさか…私が失敗したとで……ん?」

 ふいに、誰かにローブを引っ張られる、キャスターは足元を見ると。

「…あ、やっと気が付いた」

 群青色の陣羽織を着込んだ五、六歳の少年が居た。

「…も、もしかして、あ、あ、あなたが?」

 最悪の結果を想像し口元を震わせるキャスター。

 少年はそんなキャスターの心情などお構いなしに笑顔で。

「ねぇ、僕を呼んだのおばちゃん?」

「お、お、おば、おば……」

 別の意味で再度、口元を震わせるキャスター



「…はっ、こんな事している暇はないわ」

 一瞬、キャスターは気を失いかけたが何とか踏みとどまる。

「ぼ、坊や…私をお、おばちゃんじゃなくて、お姉さんと呼んでくれない?」

 ローブにしがみ付いている子供に言い聞かせるキャスター。

 子供は笑顔で。

「うん」

「そう、いい子ね。それ……」

「わかったおばちゃん!!」

「―――――――」

 元気の良い大声で言われ、絶句するキャスター。



「――――はっ! いつまでもこうしている暇はありませんわ」

 慣れたのか? 今回は気を失わず、すぐに我に返る。

「…坊や! 貴方のクラスと真名を教えなさい!!」

 鋭い口調で子供に聞く。

「う、うえっ……ひっ…く…」

 その口調に怯え、泣きそうになる子供。

「え、えっと、…ぼ、坊や?」

 戸惑いを見せるキャスター。

「うわーん、おばちゃんがいじめるーー!」

「―――――――――」

 今度こそ、立ったまま気絶するキャスター。





 子供が泣き止まないまま数十分が経ち。

 ―――――何を騒いでいる。

 寺から一人の人物が現れた。

「―――――はっ! そのお声は宗一郎様」

 声を聞いた途端、キャスターは気絶から立ち直り、振り返る。

 キャスターのマスターである葛木宗一郎はゆっくりと泣き続ける子供に近付きながらキャスターを一瞥し。

「キャスター、お前がどう行動しようが、私は関知しないつもりだが…ここで騒ぎを起こすな」

「そ、宗一郎様……」

 静かだが、心の中まで入りこんでくる葛木の声に恐怖で身を震わせるキャスター。

 葛木は子供の前まで来るとしゃがみ込み、目線を子供に合わせると。

「名は?」

「ひっく…さ……佐々木…うぇ……こ…小次郎…」

 葛木はキャスターが聞けなかった子供の名前をあっさりと聞き出すと。

「…では小次郎、何故泣く?」

「…あのおばちゃんがいじめたから……」

「! い、いえ、宗一郎様、私は……」

 小次郎に指差され、キャスターはうろたえる、だが宗一郎はキャスターに振り向きもせず話し続ける。

「…そうか、だがそんな事は大した事は無い」

「…そ、そうなの?」

「今から私はお前を殺そうとする」

「…うん……」

 葛木の突拍子の無い話を、真面目に聞く小次郎。

「小次郎、お前は私が怖いか?」

 葛木の問いに、小次郎は首を横に振る。

「何故だ?」

「だって、おじちゃんはやさしいから」

「不思議だな」

「? 何がふしぎなの、おじちゃん?」

 葛木の言っている意味が分からず首を傾げる。

「殺されるというのは、苛めより怖いことだろう」

 首を縦に振る小次郎。

「その殺される事に怖がらないお前が、何故苛めには泣く」

「あ、ほんとだ」

「そうだ、殺される事にも怖がらないお前が、苛め如きで怖がり、泣く事はおかしいだろう」

「うん」

「ならば泣くのは止めろ」

「わかった、僕、泣かない」

「そうだ」

 葛木は軽く小次郎の頭を撫でると立ち上がり、寺に帰ろうとする。

「あ、あの宗一郎様…」

 慌てて葛木に近寄るキャスター、葛木は立ち止まり、キャスターを見ないまま。

「後はお前に任せる」

「は、はい、わかりました」

 キャスターの返事に軽く頷き、寺に帰っていく葛木。





 …その後、キャスターと小次郎は仲直りし、小次郎は門番として柳洞寺を護ることになる。

 がんばれ小次郎! 負けるな小次郎! キャスターが夢を叶える、その時まで!!




あとがき

どもMARUです

ちびセイバーやちび凛だってあるんだから、ちび小次郎だって作っても良いじゃないかっ!!

というコンセプトから出来たこの話、いかがでしたか?

そのいちと書いてありますが続きを書くかは分かりません。

もしかしたら続きを書くかも知れませんので、その時はどうぞご贔屓に

ではでは〜




管理人の感想

 MARUさんから短編を頂きました〜。

 うーむ……よもやこういう路線で来るとは思ってもみなんだなぁ。
 わたしゃちっちゃい男の子に対して特別な愛情は注げないひとだからねぇ。せめてちっちゃい女の子だったら(以下検閲削除
 だがしかし! ちっちゃい小次郎はともかく、おばさん呼ばわりされて気絶するキャスターがステキさ! そんなにショックだったか……。

 この作品の続編が出るとしたら、小次郎・キャスター・葛木の親子三人ほのぼの物語になりそうですね。
 んで、そこにセイバーとか凛とか絡んできて、イリヤなんかも出てきたら……うわ、面白いかも!
 物干し竿を抜こうとして自分よりも長いから抜けない小次郎に萌えてしまうキャスターさんとか、イリヤと子供のケンカする小次郎なんてどうよ!?


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