The bow and the sword



Tumult + Crash + Perplexity = Confrontation?後編



 衛宮には外で待っていてもらい、家に入ると予想通りに両親は大騒ぎをしていた。

 刀は既に先生の所にあると嘘を言い、その場を何とか収めると、すぐに部屋に行き鞄を取ると、騒動でお弁当を用意できなかった代わりにお金を受け取ると家を出て行く。

 外で衛宮と再合流し、歩いていては遅れそうな時間だった為、あたしたちは走りながら学園に向かう。

「部活辞める前と、体力はそんなに変わっていないな」

 あたしは後ろにいる衛宮に顔を向けて話す。

「はぁ、当たり前だ、はぁ、バイトで鍛えているからな」

 多少息を切らしているが、あたしのペースについて来ている衛宮は答えた。

「なら、もっとペース上げても良い?」

 笑みを浮かべて、からかうと。

「こ、はぁ、この、はぁ、体力馬鹿、はぁ、無理に、はぁ、決まってんだろ」

 衛宮が言った「体力馬鹿」の一言であたしはペースを一気に上げる。

「あ、はぁ、待て、はぁ、美綴、はぁ、この、はぁ」

 衛宮が文句を言うが、あたしは無視して衛宮を置いていく。

 仮にも美人の女性に、体力馬鹿など言う奴を待ってあげる道理は無い。



 衛宮を置いてきたまま学園に入ると、前方に見知った顔を見かけ。

「おっ、おはよう遠坂」

「? ああ、おはよう美綴さん」

 遠坂は振り向くとあたしに挨拶を返してきた。

「…そうだ、美綴さん」

 遠坂がにんまりと笑みを浮かべてあたしに近付くと。

「昨日、本当は何処に泊まったのかしら?」

「!」

 昨日は遠坂の家に泊まっていると家に電話していた事を思い出した。

「もしかして、男の家に居たっていうオチは無いわよね」

 遠坂に言われ、頭の中で衛宮の顔を思い出す。

「そ、それは……」

 よくよく考えてみると、(サーヴァントを抜かせば)二人きりで一夜を過ごしていた事になるのではないか。

 そう思ったら、自然に顔が赤くなってきた。

「まさか本当に……」

 その様子を間近で見ていた遠坂は驚くと。

「ねえ、本当の所はどうなのよ?」

 嬉嬉として質問してくる遠坂に、どうやってはぐらかそうかと考えていると。

「はぁ、はぁ、はぁ、美綴、お前、俺になんか恨みでもあるのか……ん?」

 息を切らせながら衛宮が追いついてきた。

「よう、おはよう遠坂」

 衛宮が遠坂に挨拶する。

「……美綴さん、まさか衛宮くんの…」

 衛宮の挨拶には返事を返さず、あたしを凝視する遠坂。

「か、勘違いするなよ遠坂、べ、別にあたしと衛宮は……?」

 慌てて遠坂が考えている事を否定しようとしたが、遠坂はあたしをからかう事も冷やかす事もせず、衛宮を睨めつけると。

「…そう、じゃあ美綴さん。もう私は行くから」

 踵を返すと校舎に入って行く。

「ん、どうしたんだ遠坂は?」

「…さあ?」

 衛宮の問いにあたしも首を傾げるだけだった。



 途中で衛宮と別れ教室に入ると、とりあえず話しをしようと遠坂の席を見るが居なく、教室内を見回しても姿が見当たらなかった。そして…。



 キーンコーンカーンコーン。



 チャイムが鳴り、諦めて席に戻り改めて遠坂の席に目を向けると、いつの間にか遠坂は席に着いていた。

 慌てて話しかけようとしたが、すぐにドアが開かれる。

「?」

 ドアを開けたのは担任の葛木先生ではなく、学年主任だった。

 あたしも含め、生徒全員が不思議に思っていると。

「え〜、2−A担任の葛木先生は、昨日ガス中毒になり、しばらくお休みする事になった」

 教室中がどよめきに包まれる。

「静かにしろ!!」

 学年主任の一喝に教室は静かになる。

「え〜、葛木先生が元気になるまでは私が代理の担任になるので………」

 喋り続ける学年主任をよそに、あたしは遠坂を盗み見ると。

 遠坂は動揺もせず、静かに話を聴いていた。



 その後はいつもと同じ授業風景だったが、一ついつもと違う事は、遠坂が意図的にあたしを避けている事だった。

 休み時間に話かけようと思うといつの間にか姿を消してしまい、四時限目も終わろうというのにまだ一度も話していない。

 そんな事を思っているとチャイムが鳴り、授業が終わる。

 あたしはすぐに遠坂の席に目をやると。

「…いない」

 どんな技を使っているのか、既に遠坂は居なくなっていた。

 あたしは遠坂と話すのを諦め、学食を食べに席を立った。



 学食を早めに平らげて、2−Cの教室の前まで来るとあたしは堂々と中に入り、お弁当を片付けている衛宮に話しかける。

「ねえ、衛宮?」

「うわっ、なんだよ美綴」

 衛宮はあたしが堂々と入ってきて話しかけてきた事に驚く。

 何故か辺りが静かになるがあたしは気にせず。

「ちょっと顔貸して」

「は?」

 意味がわからず首を傾げる衛宮。

「だ〜か〜ら〜、話があるから、ちょっと付き合ってくれない」

「あ、ああ、わかった」

 衛宮は慌てて立ち上がる。

 あたし達が教室を出ると、2−C内から生徒達のどよめきの声が聞こえてきたが、それは無視した。

「なあ美綴?」

「ん、何、衛宮」

「一体何処で話をするんだ?」

 衛宮の当然な問いにあたしは、ん〜と唸りながら考え。

「屋上なんかどうよ」

「お、屋上〜」

 あたしの答えに、乗り気のない返事を返す衛宮。

「屋上は嫌なのか?」

「色々な意味で嫌だが、…それ以上に行ったらもっとヤバい事が待ってそうで…」

 変な事を言い出す衛宮に、あたしは笑いながら。

「寒さは自販機でコーヒーを買って暖まれば良いじゃん、さ、行くよ」

 相手にせず、まずは自販機目指して歩くあたし。



 がちゃっ。



 屋上へと繋がるドアを開けて外へ出る。

「あははははは、こりゃ寒いわ」

「当たり前だ、冬にこんな所に来るのは馬鹿な奴だ」

 笑って誤魔化すあたしに、衛宮は呆れながら言う。

「そう、馬鹿で悪かったわね、衛宮くん」

「そうだよ、わかったらすぐに引き返すぞ遠さ…か?」

 あたしは衛宮の後ろに居る人物を見て驚く。

「…それで、あなた達はどうしてここに来たのかしら?」

 遠坂が笑みを浮かべながら、衛宮の後ろに居たのだ。

「と、と、と、遠坂? な、何で、ここ居るんだ?」

 その場から飛び退き、慌てて振り向くと衛宮は遠坂に聞く。

「あら、私の方が先にここに居たのよ、衛宮くん」

 笑みを浮かべてはいるが、あたしから見ても遠坂は物凄く怒っている事がわかった。

「と、遠坂、さっきのは言葉の綾だから、ほ、本気に受け取るなよ」

「あら、さっきの言葉って何でしたっけ、もう一度言って頂けないかしら」

「――――――――」

 あまりの迫力に絶句する衛宮。



「…さて、そこで絶句している馬鹿は置いといて…美綴」

「へ? あたし?」

 遠坂はあたしの方に振り向くと。

「あんた、マスターでしょ」

「な、なんで、その事を」

 遠坂の言葉に驚く。



 その後、衛宮も加わえて三人で話し合う事にした。

 途中でチャイムが鳴ったが、遠坂の「サボれば良いじゃない」の一言で5時限目はサボる事になった。

「ふ〜ん、私とは手を組まないくせに綾子とは手を組むんだ、衛宮くんは」

 意味ありげに衛宮を見る遠坂。

「俺と美綴は二人でやっと一人前になるから丁度良いって、セイバーとアサシンに言われたんだよ」

 遠坂のからかいにふてくされながら答える衛宮、…きっとチャイムがなる前にコーヒーを買いに行かせたから機嫌が悪いのだろう、とあたしは推測する。

「…それにしても慎二がマスターになっているとは思わなかったわ」

 あたしが、謎のサーヴァントに襲われたの時の状況を話すと、遠坂は慎二をマスターだと断言した。

「あそこの家系は既に廃れたと思っていたけど…」

 コーヒーを飲みながら、チラリとあたしを見ると。

「ここにも例外がいるから、…十中八九の可能性で慎二もマスターになったと考えるべきね」

「…なんか、凄く馬鹿にされた気分だ」

 あたしは呟く、すると衛宮が「お互い苦労するな」と言うような視線を向けてきた。

 そんな衛宮を遠坂が頭を叩きながら。

「それにしても、綾子のサーヴァントには一度会ってみたいわね」

 謎のサーヴァントやランサー、果ては途中で終わったとはいえセイバーとまで戦いながら、いまだ無傷のままのアサシンに興味を持つ遠坂。

「止めとけ凛、どうせ敵になる奴だ。下手に馴れ合うのは後々面倒になるだけだ」

「え? だ、誰?」

 あたしは辺りを見回すが、あたし達以外に人は居ない。

 衛宮を見ると、珍しく嫌悪の顔を浮かべていた。

「アーチャー。余計な事は言わなくていいわ」

 遠坂は誰も居ない筈の自身の後ろに向けて、文句を言う。

「遠坂…今の声は」

「あ、ああ、ごめんね。私のサーヴァント、ひねくれてるから……ほらほら、衛宮くんは機嫌を直して」

 あたしの疑問を謝罪しながら答え、衛宮にフォローを入れる遠坂。

「…別に、俺はいつもと変わらないよ」

 遠坂の言葉に、多少だが機嫌を直す衛宮。

「ふ〜、時間も時間だし、とりあえず話はここまでにしておきますか」

 五時限目終了のチャイムが鳴り、遠坂の言葉に頷くあたしと衛宮。

「……もし…」

 最初に一番文句を言っていた衛宮が入り、その後に続いて室内に入ろうとするあたしの背中から遠坂が声をかける。

「…夜に出会った時は、私達は友達でもなく敵同士よ……その事は覚悟していてよ綾子」

「…………」

 背中からかけられた言葉に返事を返さぬまま、あたしは室内に入る。



 衛宮が用事を見つけたと言って外に出て行き、あたしは一人で教室に戻る。その日、遠坂は最後まで教室には戻って来なかった。





interlude 4−3





 間桐邸で士郎と慎二は向かい合っている。

「もう一度言ってくれないかな、衛宮?」

 顔を引きつりながらも、慎二はもう一度問う。

「ああ、何度でも言うよ…お前とは手を組まない」

 はっきりと言う士郎。



 …士郎は遠坂と美綴との話し合いが終わってから、クラスに戻ろうとしていた時に、窓の外を何気無しに見ると、慎二が弓道場の所に居たのを見つけ、美綴を誤魔化し、急いで外に出て弓道場に向かうと、慎二が士郎に接触してきた。

 慎二に誘われるまま、間桐邸にまで付いて行くと居間で慎二のサーヴァント、ライダーを紹介され…美綴を弄び、遠坂を自分の物にすると堂々と宣言し、その協力を士郎に求めてきたのだ。



「なぁ、考え直すなら今のうちだぞ衛宮? …なんだったら、特別に美綴はお前に譲ってあげても良いぞ」

 慎二は尊大に衛宮に言う。

 衛宮は変わってしまった親友にカッとなりかけたが、背後に控えているライダーにそれは簡単に阻止されてしまうので踏み止まる。

 慎二は気付かなかったが士郎には今、サーヴァントがいない。もし、その事がばれたら、慎二は嬉嬉として士郎を八つ裂きにするだろう。

 だから、士郎はこうして下劣な話を聞いても我慢していた。

「話はもう終わりか慎二、なら俺はもう帰るぞ」

 いい加減、慎二の話を聞くのが嫌になり、踵を返そうとする士郎。

「…本当に良いんだな、衛宮…後で跪いても許しはしないからな」

 背を向けた士郎に慎二が

「……ああ」

 士郎は振り返らずに答え、居間を出て行く。





「…衛宮の奴め、人が下手に出ていればいい気になりやがって……」

 自分勝手な事を口走りながら、しばらく悪口を吐く慎二。



「……まあ良いか、明日になればどちらが上かはっきり分かるんだしな……は、はははははははは……」

 明日に起きる出来事に胸を躍らせ笑い出す。

「…………」

 背後に控えるライダーは、そんなマスターの姿を見ても沈黙を通していた。





interlude out





 部活を終えたあたしは家に帰り、食事やお風呂に入ってから部屋に鍵をかけると巡回の時間が来るまで寛いでいた。

 時刻が十時を過ぎようとした時、軽く窓を叩く音が聞こえ。

 あたしは急いでカーテンを開けると、そこにアサシンが立っていた、窓の鍵を開けるとアサシンは中に入り。

「今日の巡回は中止だ」

 開口一番にそんな事を言ってきた。

「なんで?」

「それは…君を最初に襲ったサーヴァントに関係する事だ」

「何かあったの?」 

 アサシンの言葉に思わず聞き返す。

「ああ、少年がそのサーヴァントのマスターに会ったそうだ」

「衛宮が、…まさかマスターは…慎二なの?」

 あたしの言葉に頷くアサシン。

「それで少年に同盟を求めてきたらしい」

「…それで」

「もちろん少年は首を横に振ったそうだ」

 当たり前だと思った。しかし、それと今夜の巡回の中止についてどう関係するのだろう。

 疑問に思っているあたしにアサシンは続けて。

「…そのマスターの気性を考えると近日中に何かしらの行動を起こすと思われるので、しばらくは他のサーヴァントを探すより、その慎二とかいうマスターの動向を調べていく方針になった。という訳だ」

「…そう、分かった。…それで衛宮の方は?」

 衛宮の行動が気になり聞いてみる。

「ああ、まずそのマスターの妹を護るため、今日は自分の家に泊まらせるらしい。あと、深夜には自宅近辺少し巡回する予定だそうだ」

「なら、あたしも…」

 続きを言おうとしたあたしに、アサシンは首を横に振ると。

「巡回なら私一人でも事足りる、綾子はそのマスターが行動を何処で起こすか考えていれば良い」

「でも…」

「これはみんなの提案だ」

「提案? 衛宮やセイバーも?」

 アサシンは頷く。

「少年はまだ心の奥で、希望を諦めていない」

「…………」 

 希望というのは恐らく、慎二の事をまだ信じている事を指すのだろう。

「…なので、君には少年が出来ぬ事を考えてもらう事にしたのだ」

「…そう、でもアイツが行動を起こす場所なら一つしかないわ」

「そこは?」

「学園よ」

 はっきりと断言する。

「…やはり……」

 アサシンは呟く。

「ん? 何か心当たりがあるの?」

「ああ、午後から学園に居たのだが、結界が仕掛けられていたのでな…これで辻褄が合ったと言う訳だ」

 アサシンは真剣な表情をあたしに向けると。

「綾子、君はすぐにでも寝て明日に備えろ」

「?」

「その結界は既に何時でも発動出来る状態にある、脆い精神の持ち主ならすぐにでも発動させる筈だ」

「…その結界って何の効果があるの?」

 どんな事になるか疑問に思い、結界について聞いてみる。

「…魔術は専門外でなよくは分からぬが、学園全体を包むほどの結界だ中に居る者に何かしらの影響を与えるだろう」

「な、なら今すぐにでも……」

「無理だな」

「な、何で?」

「恐らく、生徒が集まるまでは隠れている筈だ、…後手に回るとはいえ、場所が分かっているのだから結界を発動されてもすぐに対処はできる」

「…………」

「なに、こちらは二人で行動するに対し、相手は一人…すぐに終わる事だ。安心しろ綾子」

 アサシンはあたしの頭を軽く撫でて気分を落ち着かせる。

「…ありがとうアサシン、でも子供じゃないんだから」

 撫でられる事に照れながら言う。

「なに、私から見ればまだまだ子供だよ」

 アサシンは笑いながら手を離すと。

「安心して眠るが良い」

「……わかった」

 返事をして布団に入り込む。

 アサシンはベッドを背にして座り込み、そして…。

「お休みマスター」

「…お休みアサシン」

 あたしは安心して眠りについた。





Tumult + Crash + Perplexity = Confrontation?後編 了




あとがき

どもMARUです

今回は次回に話が続く伏線のお話しですので軽めです。
次回は戦闘が中心のお話しになりますので楽しみにしてください。


ではでは〜





管理人の感想

 うむうむ、盛り上がってきましたねー。とりあえずキャス子さんを失った先生がどうなるのかと思っていたら……ガス中毒ディスカw
 凛との第一次接触を果たして姐さんがマスターってばれちゃったし、慎二はやっぱりダメ人間だし……。

 次回は戦闘中心になるとのことですので、これはいよいよアサシン先生の燕返しとか出ちゃったりしますか?
 もしくは姐さんが弓道部主将のジツリキを発揮して大活躍とかしちゃいますか?
 ああもう、燃え燃えの展開が今から目に見えるようですよ。つーわけで早いとこ5話よろしく>アサシン書きの偉い人。


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