BLOOD HUNTER/SWORD OF MAGICIAN
             作・緋琴


 ・『プロローグ』

 少女は走る。暗い夜闇の中を、少女はできうる限りの速度で疾走し、正面を向いて走り続けた。
 心臓はもはや破裂しそうなほどの心音を鳴らし、足はこれ以上走ることはできないと悲鳴をあげていた。
 だがそれでも、少女は立ち止まらなかった。立ち止まれば待っているのは死なのだと、少女は理解していたのだから。
 足が重い。心臓が破裂しそうなほど痛む。まるで泥沼を走っているかのように感じる。
 ソレほどまでに、少女は疲弊していた。
 ユンっと、何かが少女の足を掠めた。白金の閃光が煌き、少女の足からわずかに血が漏れる。
 それでも、少女は止まらない。その光景を見ながら、追跡していた人物はチッと舌を鳴らした。
 追跡者の攻撃は、どれも必殺だった。
 心臓を狙った斬撃も、首をへし折らんばかりの打撃も、先ほどの心臓を狙った投げナイフも―――
 だが、少女はそれがまるで来ることがわかっていたかのように身を翻し、完全には避けきれていないものの、いまだ死にはいたっていなかった。
 それに納得できない。絶対の自信を持ってはなった攻撃の数々は、少女に完璧でないとはいえかわされているのだ。
 追跡者の心に、わずかな焦りと、ギラギラとした憎悪が込み上げてくる。
 ソレを感じた少女は、さらに走った。
 もっと早くと。後ろから迫る憎悪を感じ、少女の心は悲鳴をあげた。
 早く…早く。早く早く早く早く早く早く早く―――!!
 気がつけば、少女は港に紛れ込んでいた。出向前の船を見つけ、少女はその中に紛れた。
 出港していく船。
 追跡者は悔しそうにその光景を見つめ、チッと舌打ちをした。
 
 殺し―――損ねた。

 追跡者の心にあるのは、やり場の無い悔しさだった。
 あんな少女ごときを殺せなかった自分の落ち度と、自分の必殺の攻撃をかわして見せた少女に。
 ぐつぐつと、憎悪が音を上げて噴出しそうだった。
 眉間に皺を寄せ、追跡者は不機嫌な顔つきのまま使い魔を放った。

 「逃がしはしねぇ」

 冷たく、ナイフのように鋭いその声。近くに人が居れば、それだけで身震いし、恐怖心でカタカタと歯を鳴らすだろう。
 追跡者は身を翻した。

 この屈辱を―――あいつの体を微塵に刻むことで返してやる!!

 そう固く誓った追跡者は、夜闇の中で虚空のように消えた。
 そして舞台は―――日本に移っていく―――




管理人の感想

 今回は第一話も一緒にいただいているので、コメントはそちらでー。


 緋琴さんへの感想はBBSまでよろしくお願いします。


投稿作品TOPにモドル